万葉の情景今に写す 大上さんが和歌浦で作品展

観海閣の上空を飛ぶサギの写真を前に大上さん
観海閣の上空を飛ぶサギの写真を前に大上さん

日本最古の歌集『万葉集』に詠まれた和歌の舞台を写真に収めた、和歌山県海南市の写真家、大上敬史さん(67)の写真展「歌の聖地玉津島」が11月15日まで、和歌山市和歌浦南の万葉館で開かれている。

大上さんは「万葉集は過去の話ではなく、今でもその風景が見られるということを証明したかった。鳥たちが懸命に暮らす姿を見て(万葉歌人の)山部赤人の気分になってもらえたら」と話している。

大上さんと「熊野古道」を世界遺産に登録する準備会(小野田真弓代表)が主催。和歌浦や県内の万葉故地、江戸時代に和歌浦の風景を描いた浮世絵の情景を写真で表現しようと、4カ月にわたって撮影した52点を展示している。

40年以上にわたり熊野古道をテーマに撮影してきた大上さん。和歌浦では木造で観海閣が再建されたことから、周辺の風景を中心に撮影することとなった。シロサギやアオサギが上空を飛び去る光景に出合い、江戸時代の浮世絵師・歌川広重の「六十余州名所図会紀伊和歌之浦」に描かれた観海閣上空を飛ぶ5羽のタンチョウヅルの絵と、万葉歌人の山部赤人が詠んだ「若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る」の構図が、現代の和歌浦でも変わらず存在しているのではないかと気付き、万葉集をテーマにしようと決めた。

4カ月通い、大上さんは干潟で餌をついばんだサギ類が満潮時に観海閣後方のねぐらへ帰る様子を確認。ついに観海閣の上を飛ぶサギの撮影に成功した。「広重の描いた絵図はタンチョウだが、真相に迫る成果を収めることができた」と振り返る。

他にも、御所の芝からの風景や妹背山など、歌で詠まれた情景の真が並ぶ。

万葉館からは歌で詠まれた観海閣の風景を見ることができ、日本の歴史的な景観を守る重要性や、千年以上続く自然の営みに目を向けるきっかけとなる写真展となっている。

大上さんは「写真は歌には勝てないが、過去の物語として片付けられがちな万葉の世界が今なお実在し、現在も野鳥の自然の営みは失われておらず、撮影可能であることを若い世代をはじめ多くの人に伝えたい」と話している。

入場無料。午前9時から午後5時(入場は4時半)まで。月曜休館。