400年続く「百味御膳供養」報恩講寺
円光さんと親しまれている和歌山市大川の報恩講寺で23日、「百味御膳(ひゃくみごぜん)」供養が行われた。約400年前から、同寺の檀家でも氏子でもない他地域の人たちの「講」が支え続けてきた貴重な行事。同寺は「本当にありがたい。後世に残していかなければ」と話している。
同寺は、知恩院(京都)を第25番とする、法然上人二十五霊場の第8番。1207年、四国に流された法然上人(円光大師)が京へ帰る途中に海が荒れて船が浜に漂着。村人が上人に帰依(きえ)したことから始まるとされる。
京に戻る上人が、自分を慕う村人に自ら桜の木で彫った像を与えたため、その木像を安置したお堂が同寺となり、その木像が本尊となった。
百味御膳供養は、毎年11月22~24日に行われる法然上人の着船記念「秋の大会式(だいえしき)」の中日に行われており、御膳は講の人々が前日から準備。カボチャやキュウリ、柿などの野菜や果物、餅、菓子、花などを、真鍮(しんちゅう)製の入れ物に大根を土台としてきれいに盛り付ける。
供養では、それら一つひとつを檀家らがリレー形式で本殿に大切に運び、本尊が鎮座する祭壇に僧侶らが次々に供えていった。その後、人々の無病息災などを願う読経などの法要が行われた。
同寺は、加太から大川トンネルを抜けたところ、大阪府に接する地にある。百味御膳を用意する講は市内各地にあったが、今は同市湊の農家約35軒で作る「中洲(なかず)の講」だけ。
代々講を支え、昨年12月に亡くなった河島静雄さんの妻・順子さん(81)は、「トンネルができる前は、船で運んだり峠を歩いて越えて運んだそうです。ことしは代わりの若い方が受け継いでくださり、おとうさんも喜んでいると思います」と話していた。