松本選手が初優勝 全日本フェンシング女子フルーレ

 第66回全日本フェンシング選手権大会(個人戦)がこのほど、東京・代々木第1体育館で開かれ、女子フルーレで県和歌山高校教諭の松本伊世選手(和歌山クラブ)が初優勝を飾った。決勝トーナメントは、息詰まる接戦の連続となったが、高校からの恩師市川真知子コーチのげきに、松本選手の気力も復活。準決勝では前回覇者の森友紀選手(熊本)を逆転で破り、決勝では吉澤千恵選手(群馬)に快勝。念願の金メダルを獲得するとともに、8月5日からハンガリーで開催される世界選手権の日本代表に決まった。

 松本選手が、フェンシングと出合ったのは、中学3年生の時、幼い頃から一緒に剣道に励んでいた姉直子さんの薦めからで、和歌山北高では市川教諭の下、着実に力を付け大学、社会人へと大きく羽ばたいた。

 前回3位の雪辱に燃え、臨んだ今回の全日本選手権では、予選リーグを5勝1敗で通過。64人が激突した決勝トーナメントは、1回戦で栗原夏佳選手(長野)と顔を合わせた。初めて対戦する相手で、まったく情報がなく、戸惑う場面もあったが15―7で下した。

 2回戦の真田玲菜選手(法政大)には、序盤リードを許す苦しい展開となったが、最終の第3セットで勝ち越し14―9で振り切った。3回戦では中学生の辻すみれ選手(岐阜聖徳学園大付属)、準々決勝では高校生の緒方実奈海選手(帝京高)に圧勝した。

 準決勝の相手は、連覇を狙う森選手で、第1セットを2―7と先制された。第2セットに入る前のわずかな休憩に、アドバイスした市川コーチの「今まで何のために頑張ってきたの」というひと言が、松本選手の脳裏に厳しい練習の日々をよみがえらせ「負けるような練習はしていない」と自らを奮い立たせて挑んだ第2セットは、強気の攻めが次々決まり10―8と逆転。第3セットも森選手の反撃を抑え15―11で劇的な勝利を決めた。決勝でも松本選手の勢いは止まらず、吉澤選手を終始圧倒。15―6で締めくくり、栄冠を手にした。

 社会人として、教諭の業務を終えてから、和歌山ビッグウエーブで、クラブのメンバーと練習に励んでいるが、一日の練習は3~4時間。丸一日練習に取り組めるプロ選手が多く出場した今大会での、松本選手の頑張りに、優勝の祝福に加え、日々の努力への大きな拍手が会場から送られた。

 松本選手は「初優勝はうれしいけど、目標は2015年の紀の国わかやま国体での優勝です。今回は自分の力だけではない、いろんな人に支えていただいた優勝でもあり、これからも常にチャレンジする気持ちを大事にしたいです。世界選手権では、自分の実力がどこまで通用するのか、試してみたいです」と瞳を輝かせた。