地域の伝統野菜「和歌山大根」 まもなく蒔き時、家庭菜園でも

 前号、前々号ではことしの猛暑について取り上げた。相変わらず暑い毎日だが、コンビニエンスストアでは早くも「おでん」の販売が始まっている。

 店員によると販売を始めたのは8月10日ごろ。「暑い盛りですが昨年よりもよく売れています。ことしは早くから冷やし麺などが売れたので、そろそろ温かい食べ物を食べたいというお客さまが増えてきたのでは」と話す。

 おでんといえば、大根が代表的。秋・冬の本格的なシーズンに向け、まもなく大根の種まきが始まる。県内では多くが和歌山市で生産。

 地域の伝統野菜「和歌山大根」は、紀の川河口や海岸沿いの砂地で栽培される和歌山県特産の白首大根。種まきから約2カ月で30㌢ほどにまで成長する。食べる部分が純白であるのが特徴。

 「和歌山大根」の始まりは江戸時代中期。参勤交代に出た際、江戸から持ち帰った大根の種を和歌山城周辺の砂地に植え、城下に広まったとされる。出荷のピークは昭和30年代で、それ以降は苦味の少ない青首大根にシェアを奪われ、栽培数が減少。肉質が緻密で軟らかいことから「紀の川漬け」や「べったら漬け」などの漬物にされることが多いが、煮物にも使える。

 最近では家庭菜園向けの種の販売も行われ、ホームセンターやスーパーの園芸コーナーで容易に手に入る。筆者も購入してみたが百数十円でたくさんの種が入っていた。種まきの時期は9月上旬から9月下旬。砂地の畑での栽培が一般的だが、深型のプランターや米袋を使った栽培も可能。和歌山市特有の柔らかい砂地を再現すれば、難しくないという。

 ちょっとした家庭菜園で地域の伝統野菜を食べられる。この秋、筆者も挑戦してみたい。
   (次田尚弘/和歌山)