地方の可能性強調、景気回復へ 安倍総理の施政方針演説を作成
1月24日から通常国会が開会し、安倍総理が施政方針演説を行った。私は官房副長官として、この演説作成の責任者となった。総理が長時間にわたって今年の基本政策方針について述べる演説であり、非常に責任の重い仕事であった。
従来はまず各省庁から演説に盛り込む内容を提出させて、つなぎ合わせて演説を作っていた。この手法は各省からの文章を短冊状にしてつなぎ合わせるので「短冊方式」と呼ばれてきたが、これでは迫力のある演説にはならない。現内閣では安倍総理の方針で、最初から官邸で全文を作成する方式を取っている。
どういう演説にしたいか総理から指示を受けるところから演説づくりはスタートする。総理からは具体的かつ詳細な指示が出る。
総理の指示に基づいた草案ができると、総理の前で官房長官、副長官で何度も読み合わせをして表現をブラッシュアップしていく。ここでも総理から色々と注文が付く。
ある程度文章が完成すると、各大臣の所管業務に関係する部分のみを切り取って見せて事実関係の確認を行う。大臣達からは多くの注文が返ってくるが、数字など事実関係に基づいた修正しか受け付けない。各大臣の言い分を取り入れていては演説全体のトーンが不統一になってしまうからだ。
最終的には総理がスイスのダボス会議に出発する前日に施政方針演説検討閣議を開き、閣議了解をとって演説原稿が完成した。
今回の演説の冒頭と締めくくりはアフリカの話題になっている。今年の安倍トップ外交はアフリカ歴訪からスタートしたからだ。
冒頭ではマンデラ元南ア大統領の「何事も、達成するまでは、不可能に思えるものである」という言葉を引用した。演説全体を2つのキーワードが貫いている。ひとつは「やれば、できる」であり、もうひとつは「可能性」である。
安倍内閣発足後、無理と言われたデフレ脱却も道筋が見えてきたこと。計画さえも無かった東北の復興もがれきの処理にめどがつき、高台移転や災害復興住宅の計画が動き出していること。外国人観光客が1000万人を超えたこと。などを指摘し、日本人に自信を回復するよう呼びかけ、内閣として若者、女性、東北、中小・小規模事業者といった可能性を引き出していく強い決意を述べている。特に和歌山のような地方が持つ可能性を強調し、景気回復の風を全国津々浦々まで届けていくとの思いを込めた。
外交面では積極的平和主義による世界平和への貢献と今年もトップ外交を行っていく決意を表明した。
最後にアフリカに尽くした野口英世博士が実家の床柱に書き残した「志を得ざれば再び此地を踏まず」という言葉を紹介し、国会議員全員に対して議員となった初心に返って、国家国民のために仕事をしようと呼びかけて締めくくっている。
安倍総理の熱い思いのこもった格調高い施政方針演説となったと思う。