捕鯨文化を産業遺産に ワーン氏が提案
太地町の古式捕鯨を研究する和歌山大学観光学部特任助教のサイモン・ワーン氏が7日、和歌山市内で開かれたユネスコ全国大会で「和歌山の伝統文化」と題して講演。捕鯨の歴史を正しく理解するよう訴え「世界で唯一、持続可能な捕鯨文化を持つ太地は、ユネスコの産業遺産に登録されるべき」と訴えた。
オーストラリア出身のワーン氏は、同国の民間テレビ局のカメラマンを経て、環境問題などを扱うフリーランスの映像ジャーナリストとして活動してきた。平成20年にはアメリカの番組「ホエール・ウォーズ」の撮影に参加し、日本の調査捕鯨船を妨害するシーシェパードを取材している。
ワーン氏は「シーシェパードのような活動は対話的でなく対立的。歴史的にあまり理解されていない捕鯨と日本との関係を壊そうとしている」と述べた。
日本でも捕鯨の歴史が紹介されることが少なく、和歌山の子どもたちへの教育内容にも含まれていなかったことなど、捕鯨の真実を伝えてこなかった点を大きな問題として指摘。「隠そうとしない限り、本当のストーリーは消えたりしない。伝統的な捕鯨に目を向け、それがいかに素晴らしい伝統文化であるかを伝えましょう」と聴衆にメッセージを送った。
さらに、太地は網取式捕鯨が発明され、日本初の捕鯨総合基地ができた場所であることを紹介し「この歴史が、しかるべくユネスコの産業遺産の保護下に置かれることを願います」と力を込めた。
太地町の捕鯨をめぐっては、追い込み漁で捕獲したイルカの展示が倫理規定に違反するとして、世界動物園水族館協会(WAZA)が日本動物園水族館協会(JAZA)に除名を勧告し、JAZAは先月20日、WAZA残留のために追い込み漁で捕獲したイルカを入手しないことを決定。WAZAの勧告の背景に、海外の過激な反捕鯨団体による圧力などが指摘されている。