温もりの鯨アクセサリー 稲田さん作品展
和歌山市出身の装身具作家で、日本で唯一の鯨工芸継承者・稲田浩さん(68)=東京都=の展覧会が21日まで、同市本町のギャラリー半田で開かれている。
稲田さんは有名百貨店で40回以上にわたって個展を開催。個性的で斬新な作品は評判を呼び、約20年前からは鯨のひげ板を使った作品を発表してきた。
平成25年からは希少なセミクジラのひげ板を使い、正倉院の宝物「鯨鬚金銀絵如意」(げいしゅきんぎんえのにょい)の復元に取り組む。それらの功績と永年の作家活動が認められ、昨年11月に東久邇宮(ひがしくにのみや)文化褒賞を受賞。「約50年間続けてきたご褒美なのかもしれません。励みになりますね」と話す。
ひげ板とは、鯨の上あごに歯状に並んだ角質の板。光沢があり、滑らかさと硬さを兼ね備える。しかし、現在はワシントン条約により、ほぼ入手不可能。稲田さんの手元には10枚ほどが残るのみで、近い将来確実になくなる希少な素材という。
真っ黒なイワシクジラや茶色がかったナガスクジラなど、鯨によって板の色が微妙に違い、組み合わせて加工する。どれも上品・優雅な味わいがあり、宝石や天然石と組み合わせたネックレスや指輪、ブレスレットやブローチなど約200点が展示販売されている。
「日本には鯨を無駄なく大切に使ってきた文化がある。一度絶えた命でも、身に着けてもらうことで生かされる。私の役割はそこにあると思っています」と稲田さん。「鯨には石にない温かみがあり、美しい色合いが大きな魅力。作り手も楽しみながら作っているので、見る方にもぜひ楽しんでもらいたいですね」と話している。
午前10時から午後6時(最終日は4時)まで。問い合わせは同店(℡073・422・7779)。