伊勢路旅⑪三重県尾鷲市(2)
前号では、木を身近に感じられる尾鷲ヒノキについて取り上げた。
尾鷲市にはこの他にも特徴のある地域資源がある。市の南東部に位置する古江漁港から熊野灘へと延びる全長12・5㌔、水深415㍍の取水管から採水される「みえ尾鷲海洋深層水」だ。今週はこの海洋深層水について紹介したい。
海洋深層水とは、太陽光が届かず表層の海水と混ざることのない、おおむね水深約200㍍以深にある海水を指す。特徴としては、水温が年中通して約9・5度と一定し、植物の生育に必要とされる窒素やリンなどの無機栄養塩を多く含み、ミネラルも豊富であるということ。これらの特徴を生かし、食品分野をはじめ健康や美容に関する商品開発、養殖業など水産分野への利用による地域振興が期待されている。
実際に商品化されているものとしては、ミネラルウォーターをはじめ、焼酎や甘酒などの地酒、豆腐や大豆の水煮、海水から取り出された塩、そばの出し汁や料理店で提供されるご飯やスープ、干物などの加工品、栄養クリームや入浴剤などの美容品、サービスとしては温浴施設での利用など、多岐にわたる。
これらの商品化のため深層水を処理し提供する施設が、古江漁港にある「アクアステーション」。原水と、淡水、濃縮水、カルマグ水、高ナトリウム水の処理水4種類を分水(販売)。筆者が訪れた際も専門業者が大型のタンク車に給水する姿が見られた。
また、海洋深層水に関するパネル展示や加工品を販売。筆者が実際に購入したパック入りの塩は味が細やかで、深海で熟成された深層水ならではという感覚を受けた。
ここは、和歌山県から最も近い海洋深層水の採水地。熊野の自然が育み熟成された深層水の魅力にふれてみては。
(次田尚弘/尾鷲市)