津波からの「逃げ地図」 建築家協会が作成
日本建築家協会(JIA)近畿支部和歌山地域会(島桐子会長)は、南海トラフ大地震による津波襲来時の予想浸水域が示された地図に、その区域外へ逃げる道順や時間を色分けで示した「逃げ地図」を作成した。安全な場所への避難経路と、避難にかかる時間が一目で分かる地図で、同会の森岡茂夫災害対策委員長(64)は「まちづくりの原点は防災。特に自治体や行政関係者にはこの地図を活用し、災害に強いまちづくりに生かしてもらえれば」と話している。
同会は、どこで津波が押し寄せるような地震に遭っても安全に避難できるよう、平成25年に逃げ地図の作成を開始。会員外の大学の研究者や学生、市民らも加わり、10回以上のワークショップを重ねて完成させた。
対象エリアは県内沿岸地域で、和歌山市や海南市、有田市、日高町、御坊市、串本町、那智勝浦町など14市町。県が作成した予想浸水域を基に、津波が到達しない浸水域外へ逃げるための道順と時間を示している。
1分間の歩行距離を、高齢者がゆっくり歩いて進める43㍍と想定し、3分ごとに緑や黄色など8段階で色分け。地図を見れば、最短時間で安全な場所にたどり着くことができる。
ハザードマップと違い、どちらの方向に逃げればよいか、避難先まで何分ぐらいかかるかが一目で分かるのが大きな特徴となっている。
21日に和歌山市卜半町の県建築士会館で開かれた報告会で、森岡委員長が逃げ地図について説明。「単に地図を配るのではなく、肉声で伝えないと意味がない。地域の方と一緒になって有効な地図にしていきたい」と話した。
目指すのは住民参加型の地図づくりで、今後は各自治体に呼び掛け、実際にまちを歩くなどのワークショップを開催したいとしている。道幅や勾配、倒壊の恐れのある空き家など、歩いて得た情報を地図に書き込むことで、地域特有の課題を見つけ、防災意識を高める。
5月中旬には一般にも公表する他、今後はインターネット上でも閲覧できるよう、デジタルデータ化も検討している。