幻の能・紀州徳川家版「石橋」 7日上映会
紀州徳川家で「秘曲」として受け継がれ、藩の消滅とともに姿を消していた能の演目、紀州徳川家版「石橋(しゃっきょう)」が、江戸期の史料を基に復曲された。和歌山市は7日午後1時半から、湊本町の市立博物館2階講義室で、全編初公開となる「石橋」の記念上映会を開く。
同演目は、初代藩主の徳川頼宣が、お抱え能役者の古い伝承をもとに復活したとされる。当時、藩主が手掛けた演目は「秘曲」とされ、選ばれた者にのみ相伝されていたという。しかし、藩の消滅とともにその伝承も途絶えていた。
紀州徳川家版「石橋」の存在は昭和45年ごろ、能楽関連の書籍を扱う出版社「わんや書店」発行の書籍の中で紹介されていたが、専門性が高く、詳細な内容については未解明だったという。
市は、昨年開館した「わかやま歴史館」の目玉展示とするため、一昨年秋に野上記念法政大学能楽研究所に復曲を依頼。紀州藩お抱え能役者だった徳田隣忠(ちかただ)が書いた伝書『御世話筋秘曲(おせわすじひきょく)』などの史料を基に、獅子の舞い方や鼓、笛などのリズムまで、可能な限り再現した。また、紀州徳川家版「石橋」にのみ使用された装束「胸掛」や舞台に据え置く作り物なども再現した。
市は「御三家の一つ、紀州徳川家で育まれた幻の秘曲が、江戸期の史料を基によみがえりました」として、来場を呼び掛けている。
全編映像は1時間13分。上映前に学芸員による解説もある。申し込みは不要で、当日先着100人。入館料100円。問い合わせは同館(℡073・423・0003)。
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復曲に合わせて、わかやま歴史館は3日から、2階展示資料室ロビーのモニターで紀州徳川家版「石橋」のダイジェスト映像と解説を常時公開している。入場料100円。問い合わせは市和歌山城整備企画課(℡073・435・1044)。