伊勢路旅⑱三重県志摩市(2)
今週は賢島を囲む英虞(あご)湾で盛んな真珠養殖の歴史と魅力を紹介したい。
この地域で真珠養殖が盛んなのは、皆さんもご存じの真珠ブランド「ミキモト」の創業者である御木本幸吉氏が、明治26年、この地で真珠養殖の技術を確立したことに由来する。
真珠は、阿古屋(あこや)貝の体内で作られる宝石。養殖技術が確立されるまでは、小石などが貝の体内に入り込むことで偶発的に生成される神秘に満ちあふれたものとして世界に知られていた。
真珠の養殖に欠かせないのは「核入れ」の作業となる「挿核手術」。偶発的なことを人工的に行う技術だ。貝の口を開け生殖巣にメスを入れ、特別な器具を使用し真珠質を分泌する機能がある細胞(ピース)と、真珠質を巻きつけるための核(真珠核といい、BB弾のような白い球状で、淡水の二枚貝の貝殻を原料に作られたもの)を挿入。これにより貝の体内で真珠が生成されるようになる。
その後、約1年半、上質な真珠を育てるため、貝殻の掃除を欠かさず、真珠核の位置を確認するためにレントゲン撮影をすることもあるという。手塩にかけて育てた貝を浜揚げし、真珠を取り出す瞬間は感動的だろう。
その感動の瞬間を体験できる施設がある。「真珠取り出し体験」と銘打ち、収穫時期となった貝の口を開け真珠を取り出すもの。筆者は1回1000円でこの体験をしてみた。
半信半疑でメスを入れると、きれいな真珠が現れた。時価総額は体験料を大きく上回るものであったらしく、携帯ストラップにして持ち帰ることにした。どんな真珠が出てくるかは運次第。価値ある真珠の3原則「巻き(厚み)・てり(光沢)・形」を備えた真珠に出合えることを期待し、ぜひ皆さんも挑戦してみては。
(次田尚弘/志摩市)