ISの戦場や難民語る 久保田弘信さん講演

 2016県教育研究集会現地プレ集会がこのほど、和歌山市北出島のプラザホープで開かれ、フォトジャーナリストの久保田弘信さんが「ISの出現と難民問題。世界はどうなっている。われわれ日本人にできることは?」と題して講演し、約70人が聴き入った。

 教育の未来を考える実行委員会(石田道幸実行委員長)が主催。

 久保田さんは7~8年前から国際情勢についての報道が減っていると指摘。ことし2月にクルド人部隊とIS(イスラム国)の戦闘を従軍取材した際の映像に加え、国内避難民やシリアからの難民であふれるイラクのキャンプを撮影した映像を紹介し、「難民キャンプではお金が足りないせいで手術や術後の抜糸ができない子どももおり、ジャーナリストや支援団体の関係者が自腹で支援することも多い。ISに拉致されて戦闘員になる子どもも多く、戦場の悲惨な状況を知ってほしい」と呼び掛けた。久保田さんによると、従軍取材した戦闘では、隣を走行していた車両がミサイルの直撃を受けたという。

 中東の混乱をきっかけに大量の難民が欧州に押し寄せている問題について、久保田さんは欧州各国の難民政策を説明。滞在を拒絶する国がある一方で、オーストリアは衣類や食事の提供に加え、難民用フリーWi―Fiの整備も行っていると紹介し、難民キャンプには高校がなく、教育機会を求めて移動するケースも多いと解説した。久保田さんによると、日本のNGOによる支援は公平できめ細かく、現地での評価は高いという。

 久保田さんは国際情勢に日頃から関心を持ってほしいと訴えた上で、日本の報道を取り巻く環境に対する危機感を表明。ことし4月に発表された報道の自由度ランキングで日本の順位が180カ国中72位だった事実を紹介し、「報道環境の劣化は言論統制につながる。報道には国際情勢を変える力がある」と話し、危機感の共有を呼び掛けた。

 参加した和歌山市の女性は「報道の自由に関するお話が大変印象的でした。中東情勢の改善に向けて何ができるか考えていきたい」と話していた。

講演する久保田さん

講演する久保田さん