美園で70年営業の佐竹農園 8月に移転へ

和歌山市の玄関口、JR和歌山駅前のけやき大通りで野菜や花の種、苗などを販売している老舗「㈲佐竹農園」は、約70年にわたって営業してきた同市美園町の店舗を今夏で閉じ、郊外の同市島へ移転する。

趣味の家庭菜園からプロの農家まで、園芸や農業を愛する人々に種苗を提供し、県都の中心部でまちの発展も変化も見てきた同店。

44年間、店に立ち続けてきた佐竹幸江さん(68)は「季節の移り変わりや、野菜や花の出来栄えをお客さんと会話するのが楽しい。店を続けたいのはやまやまですが…」と残念な思いをにじませるが、「市街地には農地が少なく、園芸を楽しむ方は量販店を利用されるようになり、需要が少なくなりました。時代の流れです」と、移転の理由を話す。

野菜などは収穫の時期まで実の出来栄えを確認することはできないため、種の品質が重要となる。仕入れた種は全て発芽率を調べてから販売してきたとのことで、佐竹さんは「品質の確かな種をお客さんに提供してきたという自負があります」とほほ笑む。同店を信頼し、泉南方面などから訪れる農家もあるという。

客から栽培方法や生育過程について相談を受けることも多く、農家で育ち、土に親しんできた佐竹さんは、一つひとつ丁寧に応じてきた。

移転先は自社農場で、野菜や花の苗を自社生産している。まちなかの名物店がなくなることに、常連客などからは惜しむ声が寄せられているが、新しい店で今後も、新鮮で丈夫な種苗を提供することに力を注ぐ。

現店舗は7月20日まで営業し、新店舗は8月1日にオープンする。問い合わせは同店(現店舗=℡073・422・2426、新店舗=℡073・460・4832)。

店頭に並ぶ夏野菜の種を前に佐竹さん

店頭に並ぶ夏野菜の種を前に佐竹さん