災害の記憶を伝える 県立博物館が小冊子

 県立博物館施設活性化事業実行委員会(伊東史朗委員長)は、県内の災害の記録をまとめた小冊子「先人たちが残してくれた『災害の記憶』を未来に伝えるⅢ」(A5判、16㌻)を発行した。

 1万部作製し、調査対象となった由良・印南の両町住民に全戸配布した。編集に当たった県立博物館の前田正明主任学芸員は「昭和南海地震の津波の被害状況などは、直近ながら意外と知られていない。残された記録から、命を守る意識を高めてもらえたら」と話している。

 同館では平成23年の紀伊半島大水害の教訓から、今後起こり得る災害に備え、県内の災害の記憶の掘り起こしや文化財の所在確認調査に取り組んできた。

 文化芸術振興費補助金を活用し、本年度は2町に残された石碑や古文書などを調査。3冊目となる今回も、史料の原文に現代語訳を添えて掲載している。

 1707年の宝永地震津波では、印南町の寺の墓碑や位牌に、180㌢の高さの津波があったこと、寺の門柱の約60㌢に達したことが記録されていることを紹介。

 また、1854年の安政南海地震津波で浸水被害を受けた印南町の蔵の板壁に、津波には予兆があり、高い所へ逃げるよう記され、約70年前の昭和南海地震津波では、寺の記録に、津波や寺に避難してきた人々の様子を「さながらの地獄の姿か? 修羅道の姿なりや?」と生々しい表現で残していることを伝えている。

 希望する来館者には無料で配布。同館ホームページからもダウンロードできる。25、26の両日には調査成果の報告会を開く。ともに午後1時半から、25日は印南町公民館大ホール、26日は由良町中央公民館大研修室で。

 問い合わせは同館(℡073・436・8684)。

県内の災害の記録を伝える小冊子

県内の災害の記録を伝える小冊子