大奥、能舞台の復元優先 和歌山城の整備

外国人観光客の増加などにより、その価値が再び見直されている和歌山城。紀州と同じ御三家の一つ、尾張の名古屋市は約500億円をかけて、現在はコンクリート造りの名古屋城天守閣を木造で再現することを決めるなど、本来の姿で残そうという動きがある。和歌山市では、成立した平成29年度当初予算に、和歌山城の魅力向上の一環として、大奥の二の丸御殿と西の丸能舞台の復元整備に向けた情報収集の費用111万円が盛り込まれた。

和歌山城では、現存しない建造物の復元計画が進む一方、昭和33年に再建された現天守閣は、内部に雨漏りが発生するなど老朽化の影響が出ており、今後の保存の在り方について議論の必要性が高まっている。市は29年度当初予算で1702万円を計上して天守閣の耐震診断を実施し、診断結果を基に今後の保存方法について検討する。

2月定例市議会で尾花正啓市長は、和歌山城の現状を「北の麓の二の丸が政治と生活の拠点、西の丸が文化の拠点であったが、麓に壮大な御殿があったことを感じられない」などと述べた上で、整備方針について「大奥と能舞台の復元を優先して行い、御橋廊下が居住の場と文化をつなぐ結節点としての役割を果たしていたことが分かるようにする」と、遠藤富士雄議員の一般質問に答えた。

市内でも検討の声が高まりつつある天守閣の木造復元について尾花市長は、再建当時に木造とする選択肢もあったが、不燃性の高い鉄筋コンクリート造になった経緯を踏まえた上で、「江戸後期の天守閣を忠実に再現しており、昭和30年代の復元天守の中でも、極めてレベルの高い仕上がりと聞いている。再建から60年近くたち、それ自体が文化財としての価値を持っていると言える」との見解を示し、建て替えには慎重な姿勢をみせている。

保存の在り方について検討の必要性が 高まっている和歌山城

保存の在り方について検討の必要性が 高まっている和歌山城