家康紀行(31)B級グルメ「浜松餃子」
前号では、果汁100%のミカンジュースを使った「みかんハイボール」の魅力とその作り方を取り上げた。今週は作り方を教えてくれた居酒屋が薦める「浜松餃子」とその文化を紹介したい。
餃子といえば宇都宮を想像される方が多いかもしれないが、総務省の家計調査によるとここ3年間の餃子購入額のトップは浜松市(1世帯当たり4818円で、宇都宮市は4651円)。 安価で庶民的な地域の食文化であるB級グルメとして知られている。
浜松餃子はキャベツやハクサイなどの野菜が中心で、餃子独特の臭みがないのが特徴。付け合せとして皿に盛られる、茹でもやしもうまみを引き立てる。
歴史をひもとくと、戦後すぐ浜松市では養豚業が盛んであったことから豚肉や脂が手に入りやすく、浜松市および近隣の愛知県でキャベツが豊富に収穫されたことから、野菜中心の浜松餃子が生まれたという。
一度により多くの餃子を焼くため、フライパン上に円形に並べて焼く方法が一般的となり、その中央に箸休めとして茹でもやしが添えられたことが現代まで受け継がれている。さらに、外食を好まず屋台で餃子を買い自宅へ持ち帰り家族で食べるという文化が、餃子の購入量が多くなるきっかけであるという。
ミカンで共通する和歌山において、なぜ餃子の文化は生まれなかったのか。和歌山では中華料理という切り口ではなく、近隣から手に入りやすかった豚骨や鶏がら、そしてしょうゆへの親しみと手軽さから、豚骨醤油の独特なスープが生まれ、屋台の中華そばへと発展。今や全国に知られる和歌山ラーメンとなった。
似た環境にありながらも、そのご当地において、組み合わせやすい食材で市民に受け入れられ広まる味はさまざま。故に各地の食文化にふれることは面白い。
(次田尚弘/浜松市)