デザイナー・マリエさん 県の染色工場訪問
ファッションモデル、タレントのマリエさん(30)が5日、自身が運営するファッションブランドの活動の一環で、ニット産地である県内を訪れ、紀の川市や有田川町の生産工場を見学し、技術者や経営者らと伝統産業の未来を巡って意見交換した。
マリエさんは、平成23年にアメリカ・ニューヨークのパーソンズ美術大学に留学し、帰国後は企業のユニフォームデザインなどを手掛けデザイナーとしても活動している。ことし6月、自身の本名を冠した新しいブランド「パスカル・マリエ・デマレ」を立ち上げた。
同ブランドの主なコンセプトは「良いものを長く大切にすること」。布や染色に関わる技術力の高い生産現場の職人と、商品として売れるデザインをマッチングさせ、日本の伝統産業を守っていきたいとマリエさんは願っており、商品開発のインスピレーションを得ようと、日本各地のセレクトショップや工場を巡るツアーを展開中。8月下旬に東北地方を訪れたマリエさん一行は、中部地方を経て、今回の和歌山入りとなった。
一行は、ミック・テキスタイル㈱(有田川町庄)を視察した後、紀の川市貴志川町前田の吉田染工㈱、貴志川工業㈱(吉田篤生社長)を訪問。綿やウールなどの天然繊維をはじめ、レーヨン、アクリルといった化学合成繊維など多岐にわたる繊維素材の染色を手掛けている工場で、作業工程などの説明を受け、完成した繊維や生地も手に取りながらじっくりと見学した。
マリエさんは熱心に説明に耳を傾け、「職人さんが誇りを持ち、笑顔で仕事をされている様子に感動して涙が出ました。製品に関わる人の喜びの中から生み出された衣服を、多くの人に届けたい」と笑顔で話した。
吉田社長(50)は「日本のものづくりを守りたいというわれわれの思いと、マリエさんのブランドのコンセプトは同じなので、できる限り協力していきたい。マリエさんの和歌山訪問は、生産現場に勇気を与えてくれた」と語った。
両社東京事務所の秋本和利所長(55)は、海外ブランドのバイヤーも務め、マリエさんとは旧知の間柄。「マリエさんはセンスが良く、デザイン力も確か」と高く評価し、「和歌山のニットメーカーは素晴らしい技術力と、小ロット対応も受ける小回りの良さが魅力。若いブランドが前を走って、地場産業を巻き込んでいきたい」と力を込めていた。