環境に配慮求める声 生石の風力発電計画

生石高原の麓に国内有数の規模となる海南・紀の川風力発電(仮称)の設置が計画されている。事業者は東京都の企業で、設置される風車の数は最大で72基に達する予定。事業が計画地一帯の環境に与える影響について議論する第1回の環境影響評価審査会が12日に和歌山県紀美野町下佐々の同町総合福祉センターで開かれ、委員から自然環境や景観について

「もっと配慮を」と厳しい意見が聞かれた。

事業者は日本風力エネルギー㈱(東京都港区)を代表社員とする合同会社「NWE―03インベストメント」と「NWE―09インベストメント」。日本風力エネルギーは平成27年に設立され、青森県や茨城県で大規模な風力発電施設の設置を計画している。

計画は、紀美野町を中心に、海南市や紀の川市、有田川町の計4市町に風力発電施設を設置しようとするもの。最大出力は32万4000㌔㍗で、4500㌔㍗の風力発電施設が72基設置される。発電機の高さは最大で約150㍍とされている。本工事の開始は平成32年8月、運転開始は同35年4月を予定している。事業者は1日付で環境影響評価(アセスメント)の第1段階に当たる配慮書を経済産業大臣や仁坂吉伸知事、計画の対象地域の市町長に送付した。

審査会には委員8人が出席。日本風力エネルギーの猪原和樹マネージャーは、同社が国内20~30カ所で風力発電の設置を計画していることや、計画の規模がさらに拡大することはないことなどを説明した。

委員らは同計画について、土砂の流入や景観保全に対する考慮の不足を指摘。委員の1人は県の景観計画で山の稜線と開発の調和が求められていることを挙げ「今の計画はこの点を切り捨てている。事業者として景観に対する姿勢をしっかり示してほしい」と求めた。

会議終了後は、生石高原から計画地を訪れ、一帯に霧が立ち込める悪天候だったが、地図を手に発電施設の設置が計画されている箇所を視察した。

猪原マネージャーは取材に対し、生石高原の麓を計画地に選んだ理由について「関西電力の電線が使え、夏場も強い風が見込めるのが大きい。1、2年前から考えてきた」と説明。地元住民への説明については「区長には説明しており、住民から意見が出ればその都度しっかり対応したい」と話した。

今後は10月4日に和歌山市西汀丁の県書道資料館で第2回の審査会を開き、同月末までに仁坂知事の意見が事業者に示される。

地図を手に計画地を視察する委員ら

地図を手に計画地を視察する委員ら