ミカンをミンチに凝縮 新製菓材料を開発

 和歌山県和歌山市中島の人気洋菓子店「ル・パティシエミキ」を経営する㈱Mikiの三鬼惠寿社長(56)は、ミカンの皮と身を余すところなく使用し、これまでになかった製菓材料「ミカンのミンチ」を開発。さらにこの「ミカンのミンチ」を混ぜ込んで商品化した焼き菓子「蜜柑シェ」が徐々に人気を高めており、和歌山の新たな名産に育てようと意欲を燃やしている。

 「ミカンのミンチ」は、特殊な技術で苦味を取り除いた皮を刻み、果汁と共に糖分などを加えて煮たもの。東京の食品加工会社と共同研究し、約2年かけてミカンの淡い香りや甘さ、鮮やかな色を菓子で表現することを可能にする製菓材料を業界で初めて開発した。

 きっかけは約10年前、三鬼社長が有田市のミカン農家、的場秀行さんに出会ったこと。的場さんは家業を継ぐ意思のある息子に、「生計を立てるのが難しいミカン栽培だけではなく、収益の上がる農家として継承したい」と思い、マンゴーの栽培を手掛けていた。品質は良いものの、果実がキウイほどと小さいため売れ行きが悪く、廃棄せざるを得ない状況が続く中、栽培を始めて4年目に三鬼社長と出会った。甘みとコクが強く、食感の良いマンゴーと、的場さんの「おいしいものを作ろうとするまっすぐな人柄」に感銘を受けた三鬼社長は、翌年からマンゴーを全て買い取ることにした。

 さらに三鬼社長は、ミカン農家の収益向上がB級品の扱い方にかかっており、1㌔当たり10円で取引され、ジュースに加工されている現状では収益アップは望めないことを知り、B級品を製菓材料に加工することを思い立った。

 取引のあった東京の食品加工会社に相談し、何度も試作を重ね、甘みや酸味の微調整を行い、「ミカンのミンチ」を完成させた。

 鮮やかなミカン色で、サラッとした液状になっているミンチは、口に入れると刻まれた皮から香りが広がり、飽きのこない爽やかな甘さが広がる。「ジャムでもペーストでもなく、どう表現したらよいか分からない。ミンチというしかない」と、新しい製菓材料の出来栄えに胸を張る三鬼社長。

 ミカンのミンチをたっぷり使い、梅パウダーで酸味を加えるなどして丹精込めて商品化した「蜜柑シェ」について三鬼社長は、「職人として、おいしい菓子を作ることに一生懸命取り組んできた。これからは農家さんのためにこれを売れる商品にしなければ」と話し、販路拡大に力を入れている。

ミカンが凝縮された焼き菓子「蜜柑シェ」

ミカンが凝縮された焼き菓子「蜜柑シェ」