首相改憲案の問題語る 弁護士会学習集会
安倍晋三首相が5月に行った憲法改正の提言について考える、和歌山弁護士会(畑純一会長)主催の憲法学習集会「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊を憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」が20日、和歌山県和歌山市屋形町のルミエール華月殿で開かれ、学習院大学大学院法務研究科の青井未帆教授が憲法学の観点から首相の提言内容について解説し、約100人が聴き入った。
安倍首相は5月3日、戦力の不保持や交戦権の否認などを定めている憲法9条の改正に改めて意欲を示し「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」と提言。2020年には新憲法を施行させたいとした。
青井教授は、安保関連法で新たに認められた自衛隊による米軍艦船への洋上給油が、ことし4月から日本海で行われていることが14日に判明したことにふれ「武力の行使に直接は関わらないが、知らされていなかった事実は重い。政府が情報を出さない中、おかしいんじゃないかと思う姿勢が大切だ」と強調した。
自衛隊と憲法の関係については、現在の憲法が実力組織の自衛隊を条文上で特別に規定せず、内閣の職務を定めた73条の「一般行政事務」と、首相による行政各部の指揮監督権を
定めた72条が根拠規定になっていることを紹介。自衛隊を憲法に明記することは、国家の特殊な作用を正面から認めることになると説明した。
自民党憲法改正推進本部の条文案が「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織として(の)自衛隊」と規定していることについて「任務や権限の確定が不十分」と指摘し、「軍刑法や軍法会議をどうするかの問題が発生し、人権規定を重視する市民法と対立が生じる。首相は(自衛隊を明記するだけで)変わりませんと言うが、これを起点に大規模な改正につながる危険性がある」と注意を呼び掛けた。
青井教授は「(首相は)軍隊の統制に正面から向き合っていない。自分たちのこととして(問題を)捉える必要がある」と話し、改憲を巡る議論で論点に浮上している緊急事態条項の創設や高等教育の無償化については「法律で相当な整備ができる。的外れな議論だ」と批判した。