中古住宅の利活用を 空き家問題の講演会

空き家を減らす対策について考える講演会が和歌山県和歌山市七番丁のダイワロイネットホテル和歌山で開かれ、中央大学法科大学院の野村修也教授(商法)が「『空き家』問題の処方箋―中古住宅の利活用こそが地方創生の鍵だ―」と題して話し、中古住宅の市場を創出する必要性を訴えた。

県内在住の卒業生で構成する中央大学和歌山白門会が中心となって企画。弁護士や自治体首長、市民ら約120人が聴き入った。

野村教授は空き家の増加について、総務省が発表している「住宅・土地統計調査」を示し、全国の総住宅数に占める空き家の割合を表す空き家率が平成25年現在で13・5%となっており、昭和48年の5・5%から上昇する一方であることを紹介。現在のペースが続けば、16年後には28・5%になると予測されていることを話した。

平成27年に施行された空き家対策特別措置法では、不適切な管理により倒壊の危険があるなどの条件を満たした空き家について、所有者が指導や勧告、命令に従わなかった場合は行政が所有者に代わって取り壊すことができるようになった。野村教授は同法の施行を重要な変化とする一方で、多くの空き家は耐震性や快適性などにおいて大きな問題がないと強調。空き家の発生原因として、日本人の新築志向の強さを挙げた。

野村教授によると、平成25年度の空き家数が820万戸なのに対して、同年度の新築戸数は消費増税前の駆け込み需要もあり、99万戸に上ったという。住宅取引に占める中古住宅の割合が米国や英国は80%を超えるのに対し、日本は約15%にとどまることを指摘し、「中古車の市場に比べて、家そのものを流通させるマーケットはとても小さい。立派な家が空き家になっている」と説明した。

空き家の増加を抑制する方策として、年齢や家族構成に応じて住宅を住み替えることが有効とし、「空き家問題は日本人の家の持ち方が大きく影響している。これに気付いて中古住宅を利用してほしい」と呼び掛けた。

講演する野村教授

講演する野村教授