古代墨で力強く 春日神社で書き初め会
紀州古代墨といわれる『松煙墨』を使った日本で唯一の書き初め会が、和歌山県海南市大野中の春日神社(三上秀信宮司)で1、2の両日開かれ、硬筆と合わせて640人の小中学生(硬筆は幼稚園児も含む)が、新たな年の上達を作品に込めた。
松を原料とする松煙墨は、平安時代に紀の国(和歌山県)の特産として、広く大宮人に親しまれた墨で、墨の香りと淡く光沢を抑えた色合いが特徴だが、油煙墨の普及とともに、姿を消した。
古里の良き伝統を伝え、子どもたちに古代の墨に親しんでもらおうと書き初めを始めた三上宮司は、この会のために奈良の専門業者に依頼し、特注で松煙墨の墨汁を用意。墨の原材料となるすすは、県内の龍神村(現田辺市)から運ばれてきたもので、参加者は山林に囲まれた木の国ならではの墨を、筆にしっかり含ませながら力作に挑んでいた。
正月らしく、帰省して書き初め会に訪れる参加者も多く、京阪神をはじめ愛知やベトナムからの子もいた他、親子2代にわたってという小学生も多かった。毎年、監察官を務めている近畿大学講師で日展会友の小西泰鳳さんは「油煙墨にはない、墨独特の香りが会場に広がっていて、墨の色合いを楽しんでいる子もいます。題材では、正月ならではのものでなく、例えばロマンのような夢のある作品も増えているように思いました」と話した。
各賞の発表は10日ごろ神社に掲示する他、20日から28日まで、同神社で全作品の展覧会(午前10時から午後4時まで)、27日には神社内で表彰式が行われる。