36回目の演奏会 25日和歌山ジュニアオケ
和歌山ジュニアオーケストラの「第36回定期演奏会」が25日、和歌山県和歌山市三沢町の中央コミュニティセンターで開かれる。長年、バイオリン指導者として県で多くの子どもたちを育ててきた倭田慶子さん(87)=和歌浦東=の呼び掛けで結成された青少年の弦楽オーケストラ。少子化の影響で団員数は伸び悩み、現在は数人になったが、倭田さんは「合奏という体験には、自主性や協調性、仲間との連帯感など生きていく上での本質が詰まっている。子どもたちに音楽の楽しさを伝えたい」と、本番に向けて奔走している。
同オーケストラは1981年、「弦楽器を愛好する青少年の集まり」として結成。国内外で活躍する多くのバイオリニストを育てた東儀祐二やその門下生らを指導者に迎え、自宅でバイオリン教室を開く倭田さんも代表として共に指導にあたってきた。
多い時には小学生や中学生など30人ほどの団員がいたという。地域のイベントでの演奏に加え、15周年を迎えた1996年には米・ニューヨークのカーネギーホールで演奏し、温かい喝采を受けた。2001年と03年に訪れた県内の養護学校では、生徒たちが涙を流して聴いてくれた。観客の反応が楽しみで、本番は必ず客席で聴いていたという倭田さんは、「どのコンサートにも感動と出会いがあった」と懐かしく振り返る。
県を拠点に活躍するバイオリニストの北島佳奈さんも倭田さんの教え子で卒団生。年齢を超えたアットホームな団の雰囲気に、「先生、このオケ絶対続けてな」と言い残していった子もいた。音楽を学ぶ厳しさと楽しさ。多くの子どもがこのオケでの経験を糧にそれぞれの道に巣立っていった。
だが最近は、中学受験や進学で楽器を中断したり、勉強や部活などに追われたりして楽器を手にする子どもが少なくなった。倭田さんは「子どもには精神的なものが大事なのに」と残念に思っている。
25日のコンサートでは、中学生の団員と卒団生が「美女と野獣」やバッハの「2つのバイオリンのための協奏曲ニ短調」、パッヘルベル「カノン」などを演奏する。倭田さんの好きな作曲家、ヴィヴァルディの「調和の幻想」も選曲した。
本番まであと少し。プログラムやチラシの作成、演奏会の周知に倭田さんは走り回っている。「子どもたちが音楽に親しむ土壌を残したい。この年になりいろんなことを整理したが、多くの方の支えで歴史を刻んできたこのオケだけはどうしても手放せない」との思いが支えになっている。
午後2時開演。入場無料。問い合わせは倭田さん(℡073・444・9354)。