社会福祉の向上へ 「竹の里園」開園20年

 社会福祉法人「浩和会」が運営する特別養護老人ホーム「竹の里園」(和歌山市明王子)が開園20周年を迎えた。代々農家だった事務長の上野浩司さん(85)が1000坪以上の広大な農地を活用して1998年に開園した。

 専業農家をしていた上野さんは40代の頃、弟の立ち上げた建設会社に勤めた。時代は高度経済成長期。上野さんも数十億円の仕事を受注するなど右肩上がりな時代の風潮を感じる一方で、これまでとは違う少子高齢化や核家族化など社会の変容が気に掛かっていた。「社会のために自分にできることはないか」。先祖代々伝わる広大な水田だったが、跡を継ぐ人もいない。「活用し、社会の役に立てよう」と考えた。財産を全てはたき、施設建設に充てた。

 「尊い人の命を預かる場所。家族や入所者の皆さんが安心して喜んでもらえる施設でなければ」の一心で取り組み、今ではショートステイやデイサービス、グループホームなど介護事業所として業務は多岐にわたっている。

 開園時は65歳だった上野さんも、施設とともに年を重ねた。「年を取れば隠居するという人が多いが、『生涯現役』を信条にやってきた。いろんな方にお世話になり、こうして元気でいられることが何にも代えがたい恩恵です」と話した。

自然豊かな東山東地区にある「竹の里園」の前で上野さん

自然豊かな東山東地区にある「竹の里園」の前で上野さん