好球必打で頂点 智弁が圧倒の決勝選評
「2020 夏 高校野球和歌山大会」の決勝は智弁和歌山が12安打10得点の猛攻を見せ、10―1で初芝橋本を圧倒した。両チームの声を紹介しながら、大一番の舞台裏に迫る。
決勝は智弁・中西、初橋・森田の両先発で始まった。森田は縦横2種類のスライダーやカーブ、チェンジアップなどの変化球を投げ分け、直球で打者の内角を果敢に攻める。準決勝の箕島戦では9回を1点に抑え与えた四死球はゼロ。智弁の中谷仁監督は試合前、森田について「そんなに球速は出ないが、どの球種でもストライクを取れる」と印象を語り、「低めのボールになる変化球をどれだけ我慢できるか」をポイントに挙げた。一方、初橋の卯瀧逸夫監督は「相手は強力打線だが、できるだけ3点くらいまでに抑えてほしい」と期待を寄せた。
試合が動いたのは2回。表の攻撃で初橋が1点を先制すると、智弁の打線に火がついた。好調さを買われ6番に起用された畑が中前打で出塁すると、角井も安打で続き、無死1、3塁。「肩の張りはそれほど感じなかった」と話す森田だが続く中西にあっさり左前に運ばれ同点を許した。さらに細川の適時2塁打や宮坂の適時打も飛び出し、智弁はこの回4点を挙げ試合の主導権を握った。
森田は「低めの変化球を振ってもらえず、ストライクを取りにいった球を打たれた。智弁の打線に圧倒されてしまった」と振り返る。この日はボールが先行することが多かった。智弁打線は隙を見逃さない。5回は連打と犠打で1死2、3塁とし、途中出場の平田が左前適時打で1点を追加。石平がしっかりと球を見極め2死満塁と森田を追い詰めると、「後ろの打者につなぐ気持ちだった」と語る細川が左前に鮮やかな適時打。この一打で森田をマウンドから引きずりおろすと、続く綾原が代わった2番手の大西から左越えに3点本塁打を放ち試合を決めた。
智弁の先発・中西は自慢の球威を武器に、今大会3試合で2桁安打を記録した初橋の打線を抑え込んでいく。5回は弱い当たりを捕手が悪送球し無死3塁のピンチを背負ったが、8番打者に高めの直球を振らせ1死を奪うと、森田を内野ゴロに打ち取り、1番の藤原も三振に仕留めピンチを切り抜けた。
6回からは池田、大林、矢田、小林樹斗を1回ずつ投入。小林樹は先頭打者から三振を奪うと、中谷監督が「長打に気を付けないといけない」と警戒していた3番・千代松、4番・森本を連続三振に斬って取り三者連続三振で試合を締めた。
中谷監督は「選手たちが研究して自分のスイングをしてくれた。決勝戦の独特の雰囲気の中、慌てずにいこうと準備してきた。チーム全員で勝ち取った優勝だと思う」と声を弾ませた。卯瀧監督は3安打に終わった攻撃について「相手の投手は直球で押してきた。緩い球は打てても速い球は打てないうちの駄目なところが出た。対策という対策もできず(速球に)ついていけなかった」と振り返り、「森田は昨日に比べると制球の精度を欠いていた」と話していた。