カカオと醤油が融合 世界初の調味料発売へ
和歌山発祥の醤油(しょうゆ)とチョコレートが融合した世界初の調味料「カカオ醤(ジャン)」が誕生した。和歌山県湯浅町の老舗蔵とチョコレートソムリエ、フランスのチョコレートブランドのコラボレーションにより4年の歳月をかけて完成。チョコレートの香り高さと醤油の豊かなうま味を兼ね備え、和洋を問わず多様な食材、調理法への活用が期待されており、すでに国内外のシェフから熱い視線が集まっている。2021年1月20日に発売する。
カカオ醤の開発に携わったのは、老舗醤油蔵「湯浅醤油㈲」(湯浅町、新古敏朗代表取締役)、チョコレートソムリエ、バイヤーの㈱トモエサヴール(大阪市、札谷加奈子社長)、フランス・ストラスブールのチョコレートブランド「エリタージュ」(アーノルド・スタンジェル代表)の3社。
きっかけは、醤油と同じ発酵食品であるチョコレートに関心を持っていた新古さんが、札谷さんが毎年行っているカカオ産地のツアーに参加したこと。
2017年のツアーで、新古さんはベトナム南部にスタンジェルさんが有するカカオの発酵施設に滞在中、「カカオに麹菌をつけたらどうなるのか」と思い、持参していた麹菌で実験。このときは思うようにいかなかったが、翌年以降も同所を訪れては試行錯誤を続けた。
当初は商品化を意図していなかったが、伝統の木桶での仕込みにこだわってきた職人である新古さんの技術と、日本人で唯一、インターナショナルチョコレートアワードの最終選考員を務め、世界のカカオ、チョコレートに精通する札谷さんの知識や情報を合わせることで、口にした時、誰もがびっくりするような味わいの「〝ワオ!〟がある商品」(札谷さん)をつくり上げようと、さらに研究を重ねた。
醤油とチョコレートの両方の風味を生み出すためにたどり着いた方法は、醤油にローストしたカカオを漬けて熟成させるというもの。砂糖を使っていないにもかかわらず、チョコレートの香りとともに甘さも感じられる味わいを実現。カカオに最も合う醤油の種類も探求し、金山寺みその〝たまり〟から造る「九曜むらさき」が適していることが分かった。
金山寺みそのたまりは、醤油の元祖といわれており、新古さんは「醤油のルーツが一番カカオと相性が良かったのはすごいこと」と声を弾ませる。
さらに、カカオ醤には、チョコレート作りには向かない粒の小さい未熟なカカオも使うことができ、スタンジェルさんが目指す「サスティナブル(持続可能)なチョコレート作り」の理念にも合致。札谷さんは「今まで価値を生み出せていなかったものに光を当て、新たなおいしいものに変化させることができた」と喜びを話す。
完成したカカオ醤は、ペーストと粒の2タイプ。テスト使用したシェフたちからは「香りが素晴らしい」「ジビエなどくせの強いものに合う」など称賛の声が寄せられ、ミシュランの星を獲得したヨーロッパのシェフからも引き合いがあるという。