県書道資料館が30周年 11月まで記念展開催

和歌山県和歌山市西汀丁の県書道資料館(天石東村記念ホール)は、ことし11月に開館30周年を迎えることを記念し、「開館三十周年記念展~感謝をこめて~」を11月30日まで開催している。同館は、同市生まれの書道家で、書道教育の発展に尽くした天石東村(あまいし・とうそん、1913~89)の功績を伝え、書写書道教育の発展を目的に、1991年11月にオープンした。

今回の特別展では、天石の屏風作品(良寛詩、紀の国万葉歌)2点をはじめ、第4回日展文部大臣賞受賞作など9点の額装作品や5点の小品、中国の石碑などに刻まれている文字を折状にした折帖拓本を6点紹介。

天石の長女の夫で、同館の理事長を務める貴志孝生さん(77)は「屏風作品はそのときの気分で書いているものが多く、遊び心を感じられるのが特徴。絵の展覧会のように気軽に楽しんでもらえれば」と話す。

館内は3階で天石の書作品や資料を展示する他、舞台や照明、音響設備を整えた多目的ホールが2階にあり、各種企画展や会議、演奏会などが行われる文化発信の拠点となっている。

毎年夏には、「天石東村記念書道作品展」を開いており、県内を中心に幼稚園児や小中高生らの作品が約8000点寄せられる。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、ことしは開催予定。同展への応募点数から見ても、県は全国的に習字教育が盛んといわれ、県内の小中学校で行われている競書会は全国でも珍しい書写教育の一環である。競書会は、天石が立ち上げた県書道教育研究会が始めたもので、いかに天石が県の書道普及に貢献し続けているかが分かる。

貴志理事長の長男で、天石の孫にあたる貴志佳記(よしのり)事務局長は「30周年を機に、書道作品展だけでなく、子どもから大人までみんなが遊び半分、学び半分に書を楽しめる機会をより多く企画している」と話し、貴志理事長は「今後も書道を志す子どもたちを増やすことを一番の目標とし、書道の良さを広めていきたい」と笑顔で話していた。

日曜、祝日は休み。3階の観覧は大人300円、小中高生200円。問い合わせは同館(℡073・433・7272)。

天石の意志を継承する貴志理事長

天石の意志を継承する貴志理事長