学生招待し演奏会 バイオリニスト寺下さん
コロナ禍で未来の夢を描きにくくなっている学生たちに前へ進むエネルギーを届けようと、和歌山県和歌山市出身で国際的に活躍するバイオリニスト・寺下真理子さんは、県内の学生を無料招待するコンサートを、14日午後2時から市民会館大ホールで開く。人気ピアニストの角野隼斗さんと共に、市内の中高生との共演を交えて演奏する。寺下さんは「ポジティブに、故郷の皆さんの希望になるような楽しい時間を共有したい」と話している。
「Home of Spirits(ホーム・オブ・スピリッツ)スペシャルコンサート」と題し、地元企業などの協力で実現した特別企画。㈱COLOR'S INC、城善建設㈱、㈱紀泉ふるさと創研が主催する。
寺下さんは5歳でバイオリンを始め、東京芸術大学卒、ブリュッセル王立音楽院修士課程修了。国内外で演奏活動を展開し、2015年リリースの初アルバム「アヴェ・マリア」は、高音質ハイレゾ音源配信サイトで全ジャンルの中から週間1位を獲得するヒットとなった。
コロナ禍で音楽界は多くの公演の機会を奪われ、演奏活動が再開された後も、満席のコンサートの熱気、「ブラボー」の声など多くのものが失われたまま。
自粛と制限が続き、先行きが見えない中、音楽をはじめさまざまな分野で夢を諦め、手放してしまう人が増えていると見聞きし、寺下さんは「みんなの夢が消えるのが悔しい。希望を持ってもらえるよう、自分ができる範囲で実行したい」と今回のコンサートを企画した。
1年をかけてきた準備の間で、周囲からは開催に反対する声も何度も聞いた。しかし、今回は今までの演奏活動とは意義が違い、自分のためではなく、大切な故郷の未来の世代のために、困難なときに前に進む力、希望となる時間を過ごしてもらうため。「やると決めたら道は開ける」との思いで多くの協力を得、実現させた。
寺下さんの思いに賛同し、チャンネル登録者67万人を超えるユーチューバー「かてぃん」として知られるピアニストの角野隼斗さんもコンサートに出演。第1部では、2人がモリコーネ「ニューシネマパラダイス」、モンティ「チャルダーシュ」、ショパン「英雄ポロネーズ」などを演奏する。
第2部は中高生らとの夢の共演企画。角野さんは、二宮煌太さん(開智中1年)、池田彩乃さん(桐蔭高2年)の2人とピアノの4手連弾を披露する。
寺下さんは和歌山児童合唱団と共に、自身が作曲した「Home of Spirits」の合唱版を演奏する。「魂の故郷」を意味する同曲には、誰もが生まれてきた使命、自分だけの輝きがあり、自分が今生きている意味を知ってほしいとの思いが込められている。
寺下さんは「コロナで社会にうっとうしい雰囲気が広がり、ストレスも多いですが、音楽で前向きに、とにかく楽しかったと感じてもらえる時間にしたい」と話し、来場を呼び掛けている。
コンサートは、小学生から大学生までが対象の完全招待制。希望者は10日までに、名前(複数人の場合は全員分)、学校名、学年をメール(wakayama.concert@gmail.com)で連絡する。
小学生は保護者同伴、中学生以上は学生のみで応募できる。保護者または大人は学生1人につき1人まで応募可能。大人のみの応募はできない。