紀州の和菓子文化を一冊に 和大の鈴木教授
和歌山大学経済学部の鈴木裕範教授(63)が、一般向けの書『紀州の和菓子~その文化とまちづくり~』を㈱和歌山リビング新聞社から出版した。鈴木教授は「和菓子は地域の歴史風土の中から生まれた文化。和菓子を知ることは地域についてよく知ること」とし、「今まで見過ごされてきた和歌山の和菓子文化の再評価です。暮らしとまちづくりに生かしていただけたら」と話している。
「芦辺最中」「本ノ字饅頭(まんじゅう)」「大納言」「のし飴」などの和歌山市の和菓子▽「えべつ餅(柏餅)」「柚べし」などの県内各地の郷土菓子▽ 「粉河せんべい」や高野山の「大師餅」など寺社ゆかりの菓子▽松江や金沢、鶴岡など全国の城下町の和菓子と、同書には個性的な和菓子が多数登場。各店の当主や職人が語る菓子誕生物語や製法が、豊富なカラー写真と共に紹介されている。
また、和歌山城下の商家の若妻・沼野峯の『日知録』と、川合小梅の『小梅日記』に着目し、江戸時代の和歌山の和菓子文化を読み解いている。
二人の日記には70種近い菓子が出てくるといい、峯の日記に出てくるまんじゅうだけでも16種類を数える。鈴木教授は「(「氷餅」「月見だんご」などの)行事菓子からは、四季折々の年中行事を大切にする暮らしが見える」と記す。
また、全国でも指折りの老舗「総本家駿河屋」や、 和菓子文化を育んだ紀州の茶道、 日本の菓子発祥と和歌山との深い関わりなど、 意外と知られていない歴史の厚みを紹介。
初代藩主徳川頼宣が少年の時に食べて気に入った菓子▽練羊羹創始者をめぐる考察▽10代藩主治宝の時に花開いた「落雁」文化▽「江戸千家」の祖となった新宮生まれの茶人・川上不白など興味深い内容が満載となっている。
鈴木教授は「地域資源・食文化を活用した地域づくり」をテーマに全国各地を訪ね歩いており、和菓子はその研究対象の一つ。そして食べるのも大好きだという。
「和歌山人はふるさとを卑下する傾向がありますが、紀州和歌山の多様な和菓子文化は誇りです。そして誇りが新たな文化と伝統を生みます。ぜひ知っていただきたい」とにこやかに話している。
県内主要書店で取り扱い中。定価952円+税。