民家火災で人命救助 園部の中筋さん表彰

火災現場から勇敢に人命を救助したとして、和歌山市消防局(出口博一消防局長)は9日、同市園部の中筋成和さん(76)に感謝状を贈り、表彰した。中筋さんは11月3日午前7時半ごろ、自宅から30㍍ほど離れた民家火災の建物から、逃げ遅れた住民の女性(88)を助け出した。女性とは古くから近所付き合いがあり、地域の絆から生まれた救出劇だった。

中筋さんが火災を知ったのは、近所の人の「いつもと違う煙が出ている」との情報からだった。現場の家は、女性と息子(60)の2人暮らし。いつもは煙など出ない家だったことからすぐに火災と気付いたという。

現場付近で、自宅から飛び出した息子を発見し声を掛けると、女性がまだ室内に取り残されていることが判明。火が回っていなかった裏口に行くと、「助けて」という女性の声が聞こえた。

鍵が掛かっていた勝手口のガラスを、近くにあった何かの鉄製の柄でたたいて割った。ガラスが割れた扉からは煙の漏れが少なかったことから、「これで(女性は)助かる」と確信したという。その後、割ったガラスの隙間から鍵を開けて、無事に女性の救出に成功した。民家は全焼し、女性は気道にやけどを負ったが、順調に回復しているという。

中筋さんは「当たり前のことをしただけ。女性のことは、お嫁さんに来た時から知っていたから、助かって本当に良かった」と火災当時を振り返った。

出口消防局長は「普通の人なら炎を見ると立ちすくんでしまうのに、勇気ある行動だった。少しでも助けが遅れていれば、女性が亡くなっていた可能性もあった」と話し、中筋さんをたたえた。

表彰された中筋さん

表彰された中筋さん