ピアノ国際コンクールで優勝 柴田陽さん

和歌山大学付属小学校6年生の柴田陽(ひかる)さん(11)が、7月28日にイタリア・ベルガモで開かれた第5回タディーニ国際音楽コンペティションのピアノ・ソロ11~13歳の部門で最高位の第1位・特別賞に輝いた。柴田さんは「練習は大変でしたが、好きな曲に集中して、自分の音をきちんと聴いて演奏することができました」と喜びを話している。

柴田さんは3歳からピアノを始め、これまでにイモラ国際ピアノオーディションinJAPAN(2018年、東京)小学校高学年の部1位、モーツァルト国際ピアノコンペティション(17年、タイ・バンコク)1位など、国際コンクールで入賞を重ねる実力を身に付けてきた。

両親の仕事の関係でタイやラオスで長く暮らし、17年に和歌山へ。現在は和歌山県和歌山市のピアニスト・宮下直子さんの指導を受けている。

タディーニ国際音楽コンペティションは、ベルガモのイゼオ湖畔にあるタディーニ・アカデミーで開かれる芸術のサマーワークショップの期間に行われ、世界各地から若き音楽家が集まり、マスタークラスなどで学び、演奏を披露する。

柴田さんはショパン「幻想即興曲」、スカルラッティ「ソナタK35」、グリンカ(バラキレフ編)「ひばり」の3曲を演奏。ショパンは1年ほど前から練習してきた曲だが、あとの2曲はコンペティションに向けて4月に練習を始めたという。

バロック時代のイタリアの代表的な作曲家であるスカルラッティの作品を、その母国のコンクールで演奏するのは大きな挑戦だった。同じフレーズが繰り返される箇所で、いかに違った表現をするかが大切で、練習を繰り返した。「ひばり」は原曲が歌であり、人が歌っているような音を出すことを追求した。

音楽には「正解も完成もない」が、自分の音楽を聴いてくれる「聴衆のために演奏する」との思いで3曲に向き合い、美術館のような荘厳な会場で洗練された音を響かせた。

最終選考に残った4人のうち2人が1位。柴田さんはその中でも最上位の特別賞に選ばれ、スカルラッティについては「変化に富む演奏」、バラキレフには「人の声のような美しい音色」などの評価が寄せられた。

最高の結果を残せたコンクールの喜びとともに、柴田さんは音楽を愛する世界の人々との新たな出会いに心躍らせた。

マスタークラスの参加者は柴田さんが最も若い世代で、上は20代半ばまで。ベルギー、ロシア、中国、トルコ、ブルガリアなどヨーロッパ、アジア各地から集まった音楽家たちと、国や年齢を超えて交流した。

優勝したコンクールにはもう出場できないが、マスタークラスには次も参加したいと思っている。

「音楽で人を喜ばせることができる人になりたい」と笑顔で話す柴田さん。10月4日には「第1回きのくに音楽祭」への出演も決まっており、和歌山に美しいピアノの音が響く。

優勝の証書を手に笑顔の柴田さん

優勝の証書を手に笑顔の柴田さん