自然素材を生かして 手漉き和紙工房あせりな
和歌山県紀美野町に移住した西森三洋さん、有紀さん夫妻が、2017年から自然素材100%の和紙を昔ながらの方法で制作する「手漉(す)き和紙工房あせりな」を営んでいる。「体験を通して和紙の魅力が伝われば」との思いから、工房ではうちわやあんどんなどの、ものづくり、紙すき体験を行っている。
同工房は「紙や環境に負担をかけないこと」を大切にし、植物の繊維のみを使用した和紙を制作している。国産の楮(こうぞ)と地元釜滝の水、トロロアオイの根の粘液を用い、昔ながらの技法で手間をかけて作っている。
さらに3年ほど前からは、同町に自生する原種に近い楮を使い、100%紀美野町産の和紙作りをしている。繊細で柔らかく独特の風合いに仕上がるのが特徴。
色の付いた和紙はシュロの葉やハゼの草の枝、柿の葉など、同町ならではの植物を使い紙をすく前に材料を草木染で染める。ピンクや緑、黄色など落ち着いた渋めの色合いが魅力的だ。
紙をすくときの簀(す)に丸い型を縫い付けることで型の部分には紙がのらず、違う色の通常の和紙を重ね合わせ、一緒に乾かすことで愛らしい水玉模様が出来上がる。
同工房での体験は「世界に一つのオリジナル作品ができる」と人気。数種類から好きな和紙を選び制作していく。うちわづくり(1700円~)は約20分ほどで完成する。カードケース、あんどん作りもでき「自然から作った柔らかい触感を感じながら作品づくりを楽しんでもらえたら」と有紀さんは話す。手書きでイラストやメッセージも描け、父の日や母の日などの贈り物に制作する人も多いという。
「のれんも紙なのよ」といい、和紙を紡いで糸にし、織り機で織っていくと麻のような仕上がりの紙布が出来上がるのだとか。
かつて紙は貴重なもので、和紙にたくさん書き、とことん使った後も、溶かして再生紙に。糸に紡いで紙布として使った。「楮の株も切り取った部分からまた生えてくる。完全循環型で究極のSDGsですね」と有紀さんは和紙の魅力を語る。
店内には、ふくさやブックカバー、名刺入れ、ポーチ、バッグなど、どれも表情が違う小物が並び買い物も楽しめる。紙すき体験は4人以上、2週間前までの予約となっている。
【手漉き和紙工房あせりな】紀美野町釜滝119▽℡073・488・1168▽午前10時~午後5時(体験受け付けは午後3時半)まで▽定休日=不定休