地域の宝継承を 高校生が仏像の複製奉納
和歌山工業高校や向陽高校の生徒たちが3Dプリンターで制作した「お身代わり仏像」が13日、紀の川市桃山町中畑の細野阿弥陀寺に奉納された。仏像を受け取った中畑地区の中尾幸永区長(65)は、「地区の財産として大切に祭ってきたい」と喜んだ。
奉納されたのは、同寺の平安時代の「阿弥陀如来坐像」(高さ50・9㌢)のレプリカで、プラスチック製。実物は県立博物館に保管されている。
「お身代わり仏像」の制作は、仏像を盗難被害から守り、信仰の場を維持しようと、県立博物館が中心となり2012年度に始まった。今回を含め、県内各地の寺社20カ所、37体を複製してきた。
現在は同博物館の学芸員・島田和さん(27)を中心に、和歌山大学教育学部や和歌山工業高校などの協力を得て、高齢化や人口減少などで管理が困難になっている地域の文化財保護に貢献している。
和歌山工業高校では昨年9月から12月にかけて、課題研究の一環で取り組んだ。産業デザイン科の生徒7人が仏像を3次元スキャナーを使って計測し、3Dプリンターで複製を出力。その後、向陽高校美術部の生徒10人が約2カ月かけて着色し、完成させた。
この日は、地元住民数人が見守る中、制作に携わった和工の3人、向陽の7人の生徒らが、お身代わり仏像を寺のお堂に運んだ。
中尾区長は「複製された仏像がプラスチックと聞いて不安もあったが、きょう初めて見て改めて素晴らしい技術だと実感した」と笑顔。奉納した向陽高校の田渕莉玖さん(2年)は「仏像の傷や螺髪(らほつ)が細部まで再現されていたので、筆で着色するのに苦労した」と話し、この春、和歌山工業高校産業デザイン科を卒業した上野山浩子さん(18)は「自分たちが作ったものが、地域の人に受け継いでいってもらえるのは貴重な経験で感動です」と話した。