桜酵母「熊野紡」と命名 和大生らPJ

100年ぶりに新種同定された和歌山産のクマノザクラの酵母に名前を――。和歌山大学観光学部出口研究室の3年生6人が進めてきた「酵母命名プロジェクト」の発表会が、和歌山市役所14階のレストラン「FARM TO TABLE十四階農園」で開かれ、三つの最終候補で投票し、ストーリーや世代、歴史を紡ぐとの思いが込められた「熊野紡(くまのぼう)」に決まった。

クマノザクラの酵母は2018年、和歌山工業高等専門学校(御坊市)の研究によって採取された。クラフトビール醸造を行う和歌山ブルワリー(㈱吉田、同市西小二里、吉田友之代表取締役)との共同研究を経て商品化され、現在は同社と㈱オークワが共同開発したクラフトビール「AGARAクラフト三代目ver.」に使用されている。

同社は和歌山産酵母の海外進出を視野に、学術名「Saccharomyces uvarum(サッカロミケス・ウバルム)」の後に続く名前を決めるにあたり、「地域活性化へつなげたい」との思いから、出口竜也教授の研究室に協力を依頼。

学生が主体となって同プロジェクトを立ち上げ、名前を募ったところ31件の名称が集まった。1次審査を通過した「クマノ酵母」「hana-mankai(ハナマンカイ)」「熊野紡」の三つが最終候補に残り、この日会場で投票が行われた。

その場で開票され、大阪府泉南郡熊取町の会社員、瀧本教正さん(44)考案の「熊野紡」に決まり、目録が贈られた。瀧本さんは「クマノザクラの酵母が未来と現在をつなぐ新たな商品となるようにと願いを込めた」と話し、「選ばれてうれしい。後世まで残る。瀧本家の歴史に残せた」と大喜び。

「〝くまのつむぎ〟と名付けたのですが、〝くまのぼう〟もいいですね」と話し、大学生らの読み間違えが紡いだ新たなストーリーを歓迎した。

同校の楠部真崇教授は「〝くまのぼう〟は外国人も呼びやすい」と吉田代表取締役と共に命名を喜び、司会を務めていた杉本情(じょう)さん(21)は照れながらも「〝くまのぼう〟として世界に羽ばたいていってほしい」とほほ笑んだ。

吉田代表取締役は「子どもの名前が決まったような感じ。次は親の責任として、個性を発揮しながら愛され、称賛されるおいしいビールになるよう、しっかりと酵母を育てていかないと。学生たちにも誇りに思ってもらえたら」と意気込んだ。

大前陶子さん(21)は約半年にわたる取り組みを振り返り、「酵母が何か分からないところから勉強を始め、和歌山の歴史などにも詳しくなれた」「達成感がある」と笑顔。「みんながたくさん呼んでくれたらいいな」と熊野紡の今後の活躍に期待を込めた。

命名を祝う参加者たち

命名を祝う参加者たち