県内被害7億5000万円 SNS型投資・ロマンス詐欺

投資詐欺の犯人側とのメッセージのやりとりの一部(県警提供)
投資詐欺の犯人側とのメッセージのやりとりの一部(県警提供)

SNSを利用した投資・ロマンス詐欺の被害が全国的に急増しており、和歌山県内でもことし1~8月に94件発生し、特殊詐欺全体の5割超を占め、被害総額は7割近い約7億5000万円に上っている。丁寧なメッセージで被害者を信頼させ、アプリを使って投資の利益が出ているかのように誤認させるなどの特徴的な手口が明らかになっており、県警は「誰でもだまされる可能性がある。お金の話はすぐに行動せず、必ず確認してほしい」と呼びかけている。

県警本部生活安全企画課によると、県内で1~8月に発生したSNS型詐欺の件数と被害額は、投資詐欺が65件、5億4652万6827円、ロマンス詐欺が29件、2億223万8216円。投資詐欺の被害者は女性が55・4%でやや男性より多く、年代別では60代(29・2%)、50代(26・2%)が多い。一方、ロマンス詐欺の被害者は男性が69・0%を占め、年代別では50代(37・9%)、40代(34・5%)が多くなっている。

丁寧なメッセージ アプリで利益装う

投資詐欺の主なパターンは、著名人が株式情報を教えるなどとうたったSNSアカウントに表示されたURLをタップし、LINEなどに誘導され、犯人側とつながってしまうというもの。

被害事例では、犯人側は「〇〇さんが成長し、最終的に収益につながることを願っています」などと丁寧な文言でやり取りし、投資に成功している人物のように装いながら被害者と人間関係を築き、投資や副業に使用するとしてアプリをダウンロードさせ、指定口座などに入金させていた。さらに、アプリの画面で利益が出ているように見せかけて信頼させ、被害者が出金を申し出ると、「税金の払い戻しが必要」などと理由をつけては繰り返し金を振り込ませる手口がみられた。

ロマンス詐欺は、被害者がマッチングアプリなどで交際相手を探す中で、SNSのダイレクトメッセージなどで犯人側とつながっている。投資詐欺とは犯人側との接触のきっかけが異なるが、丁寧なメッセージのやり取りなどで信頼させる点は共通し、最終的には投資や副業などを勧め、金をだまし取る事例が多い。

恋愛感情を利用 不自然な日本語

犯人側は、恋愛や交際に関心がある被害者の心情を利用し、「あなたの恋人になりたい」「私は今あなたのそばにいられないけどでもSNSで慰めてあげます(県警が公表した原文ママ)」などと相手を気遣うメッセージを送り、信頼関係を深める手口がみられる。メッセージには機械翻訳を思わせる不自然な日本語も少なくないが、被害者の多くは不審に思わずやり取りを続けてしまっており、同課は「相手を信頼してしまっていると、細かい点にはなかなか気が付かない」と話す。

犯人側との最初の接触ツールは、SNS型投資・ロマンス詐欺の両方を合わせてダイレクトメッセージが57%で最も多く、バナー広告が28%で続く。金銭をだまし取る形態は、口座振り込みが77%、次いで暗号資産が17%。だます際の誘導先は、アプリが52%、ウェブサイトが26%で大半を占めている。

アプリは、正規のアプリストアで取り扱っているものを悪用している事例もあるが、「LMTEX」「WHITECOVE」「Apcms」などの出所不明の不審なアプリも多く確認されており、出品元を確認することも、被害を防ぐ一つのポイントとなる。

お金の話には注意 確認電話の利用を

県警は、特殊詐欺被害防止専用のフリーダイヤル「ちょっと確認電話」(フリーダイヤル0120・508・878=これはわなや)を開設している。同課の岡山貴美憲犯罪抑止対策官は「簡単にもうかる話はない。お金のやり取りは、しっかり確認してから行う意識を持ってほしい。深刻な被害が続いており、気軽に『ちょっと確認電話』を利用してもらいたい」と話した。