ペンジュラムフォト 故小野誠之さんの作品展示

小野さんのペンジュラム作品(1991年)
小野さんのペンジュラム作品(1991年)

舞い躍るような光の線や、宇宙空間のような幻想的な表現――。一見、CG(コンピュータグラフィックス)のように見える不思議な造形は、光の軌道を写真フィルムで捉えたもの。昨年9月に95歳で亡くなった和歌山市の小野誠之さんが撮影した「ペンジュラム」の作品が、8日から14日まで、同市本町のフォルテワジマ4階イベントホールで開かれる「木国(もっこく)写友会」の第87回展で展示される。

ペンジュラムは「振り子」という意味で、ペンジュラムフォトは、振り子の原理と光を使った写真。

小野さん
小野さん

小野さんは同市に生まれ、1986年に東亜燃料工業㈱を定年退職。同時に写真活動を再開し、翌年に木国写友会に入会した。89年に県展で県教育委員会賞を受け、91年に二科展に入選して以来、同展で入選を重ね、96年の和歌山市展で無鑑査賞、97年に招待作家となった。

和歌山映像クラブ、あおぞらハイキングクラブの会長を務めるなど、写真以外にも多方面で活躍した。

ペンジュラムフォトの撮影方法は、天井からつるしたペンライトの下に、レンズを上向きにしたカメラを設置。絞りは開いたまま、光の軌道を焼き付けていく。小野さんは同会に入会以来、作品展でペンジュラムフォトを発表。生前「人と同じようなことをやってたらあかん」「常に新しいものをつくって出したい」と探求を重ね、展覧会のたびに来場者を驚かせてきた。

流れるような曲線や、柔らかさが伝わるひだのような光が、見る人の想像力をかき立てる。

振り子の自然の摂理に従いながらも緻密な計算のもとで成り立つ表現で、無数のパターンがある。日々の撮影の記録をまとめた小野さんのノートには、レンズの種類、絞り、F値、計画イメージ画などが丁寧に手書きされ、試行錯誤の跡が見てとれる。

木国写友会の島村安昭会長(75)は「カラーの表現で試みたという点でも第一人者。満足することなく、どうすればより良い作品ができるか研究を重ねておられた。この探究心、表現は誰もまねできない」と話す。

長年にわたり展覧会をサポートしてきた紙一枚工房(同市和歌浦中)の田中公康さん(72)も「唯一無二。線や流れの面白さだけでなく、趣向を凝らし、物語をつくろうとしていた。今はデジタルの技法でいとも簡単にできるような表現をフィルムで追求され、全てが小野さんの代表作と言える」と話している。

木国写友会は、大正元年に同市の写真家、島村逢紅が設立した歴史あるクラブ。今回の展覧会は、新会員を迎えて開く。40~80代の6人が2点ずつ出品する他、創立者の逢紅、島村安彦前会長ら物故会員の作品も並ぶ。

午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。問い合わせは島村会長(℡073・426・3555)。その他、出品する会員は次の皆さん。

島村安昭▽安原重子▽島村泰造▽であいのりこ▽日高明宏▽中山公章