まるでエーゲ海の街並み 和歌浦に新スポット

アパートの屋上で海風を浴びる鈴木さん
アパートの屋上で海風を浴びる鈴木さん

27日に「和歌の聖地 和歌の浦誕生千三百年記念大祭」主要イベントが行われる和歌山市和歌浦地区。細く曲がりくねった路地の階段を上ると、白と青に彩られた建物と海の絶景が広がる。エーゲ海に浮かぶサントリーニ島をイメージしたロマンチックな街並みをつくり上げたのは、鈴木美子さん(61)。「自分が住む和歌浦をもっとすてきにしたい」と、所有する土地と古いアパートを大変身させた。8月の完成以来、フォトスポットとして観光客が集まり、新名所となりつつある。

同市木ノ本出身の鈴木さんは、29歳で和歌浦漁港を見下ろす高台にある家に嫁いだ。夫は市内や周辺のアパートを経営。専業主婦として家事、育児、家業の手伝い、介護に追われる忙しい日々を過ごしてきた。「嫁いでから30年以上、忙しく風景を楽しむ余裕がなくて、和歌浦の良さが分かっていなかった」という。

2年前に夫が亡くなり、慌ただしかった日々が一変。1人で土地やアパートの管理を担い、のんびり暮らすようになった。ことし3月には、数年間空き家となっていたアパートを改修。4月に入居者募集の看板を出したところ、それを見た大阪府堺市に在住の大家里美さん(55)が、アパートを借りたいと申し出た。大家さんは「路地を上っていくとまるでギリシャのような風景が広がるワクワク感。こんな所でお店を開きたいと思った」と話す。

大家さんは3年前から和歌浦に家を借り、週末に海を見ながら暮らしていた。散歩している時に偶然看板を見つけたという。サントリーニ島の写真を鈴木さんに見せ「白と青で色を塗ったら、すてきになる」と提案すると、「大賛成!」という返事。鈴木さんもジュディ・オングの曲「魅せられて」を聞いた頃から、エーゲ海に憧れを持っていた。

5月、鈴木さんは白と青のペンキを買い、所有するアパートと土地の周辺を1人で塗り始めた。ローラーとはけで、壁や階段などに20㍑の缶15個を使ったという。「しんどかったけど、憧れの風景を想像しながら毎日がワクワク、ルンルンだった」と笑顔。

空き地には花を植え、ガーデンも作った。アパートの内装は地域住民らの協力でエーゲ海風にリノベーションした。

店の名前は「ライオンリゾート」。8月10日にオープンし、黒沢牧場のソフトクリームと和歌山の旬の果物を使ったスイーツを提供している。今後は2階にゲストルームをオープンし、真っ白な壁に絵を描く予定だという。

鈴木さんはこれまでの日々を取り戻すように毎日、朝日と夕日を眺めながら和歌浦の景色をゆったりと味わっている。「大家さんとの出会いで人生が激変した。まだまだ進行形。もっとすてきにしていき、和歌浦がたくさんの人でにぎわってほしい」と目を輝かせている。

ライオンリゾートは週末と祝日に不定期でオープン。開店情報はインスタグラムで確認できる。