配慮欠く人事 和歌山市職員自死で審査会意見書

意見書について記者会見する中川会長
意見書について記者会見する中川会長

和歌山市の補助金不正を公益通報した男性職員(当時28)が2020年6月に自死した問題で、男性に対する不利益な取り扱いの有無について市が諮問していた外部有識者による市公正職務審査会(会長=中川利彦弁護士)は6日、公益通報で処分を受けた職員を男性と同じフロアに配属したことを「配慮を全く欠いた行為であり、不適切」とする意見書を市に提出した。男性に対し、公益通報者保護法が禁止する不利益な取り扱いがあったとまでは認められないとした。

男性は18年5月、勤務先で上司から不正な補助金申請の書類作成を指示され、心身に不調をきたして休職。同年8月に公益通報を行った。市は通報を元に不正を確認し、20年2月に関与した職員15人を処分。男性は18年10月に職場復帰後、20年4月から処分を受けた職員と同じフロアでの勤務とされ、同年6月に自死した。遺族と支援団体は、男性の公務災害認定や、市による真相解明の責任を訴えている。

意見書では、男性の病気休職願への対応について、男性に対し正式に公益通報を行う意向かを確認し、そうであれば通報窓口への通報などの適切な措置を遅滞なく取るべきだったと指摘。男性の復職時期や復職先については問題なかったとした。

処分を受けた職員を男性と同じフロアに配属し、10㍍程度の近い距離の座席であったことについては、公益通報したことを理由とした人事異動ではなく、不利益な取り扱いがあったとは言えないとしながらも、不適切だったとした。

さらに、通報者である男性の秘密を守ることへの注意は払われていたものの、男性へのフォローアップが行われておらず、「市の対応は不十分、不適切」と指摘。公益通報の窓口を外部に限定し、内部に置いていない市の要綱の内容も「不十分」だとした。

審査会は弁護士2人と大学教授の計3人で構成。昨年7月~ことし5月まで全15回、開催した。