和歌山市を提訴 公益通報職員の自死で両親

弁護士と共に会見する啓子さん㊧
弁護士と共に会見する啓子さん㊧

和歌山市の補助金不正を公益通報した男性職員(当時28)が2020年6月に自死したのは、市が安全配慮義務を怠ったことが原因だとして、男性の両親が12日、市に計約8800万円の損害賠償を求める訴訟を和歌山地裁に起こした。

自死したのは岩橋良浩さん。岩橋さんは18年5月、勤務先の児童館で上司から不正な補助金申請の書類作成を指示され、これに従わず、心身に不調をきたして休職。同年8月に市の外部窓口に公益通報を行った。市は通報を元に不正を確認し、20年2月に関与した職員15人を処分。岩橋さんは18年10月に別の部署で仕事に復帰したが、20年4月から処分を受けた職員と同室での勤務とされ、同年6月に自死した。

両親は、市が岩橋さんに補助金不正の業務を指示したこと、公益通報後に保護措置を全く取らず放置したことが強い心理的負荷となり、自死の原因になったと主張している。

公益通報後の岩橋さんへの不利益な取り扱いの有無については、市が諮問した外部有識者による市公正職務審査会の報告書でも、市が岩橋さんへのフォローアップを行わず、処分を受けた職員を同室に配属したことなどを「不適切」と指摘し、弁護団、支援団体も評価している。

岩橋さんの母・啓子さん(64)は提訴後の記者会見で「息子は市のゆがんだ問題を正したい、変えたいと思い、最後まで一生懸命に仕事をしていたが、プツンと糸が切れてしまったのだと思う。市でまじめに仕事をする人のためにも(裁判を)闘っていきたい」などと話した。

市は12日、「訴状が届いておりませんので、現時点でコメントは差し控えさせていただきます」との尾花正啓市長の談話を発表した。