ボーダーレスな社会 手話と音楽で伝える強力さん

レインボーの衣装で手話をしながら歌うサインシンガーの強力翔さん(39)が活動10年を迎え、全国行脚中。人の温かさにふれ「自分が生かされていると実感している。音楽を通じて一人で悩む人に届けられたら。誰一人取り残されないボーダーレスな世界をつくるため、障害の有無に関係なく楽しんでもらえる活動を続けたい」と話している。
強力さんは大阪府大東市出身。中学3年生から音楽を始めた。手話との出合いは、18歳の時に見た手話が登場するドラマだった。手話に興味を持ち、学んでみたいと思ったものの当時はチャレンジせずにいた。その後、音楽の専門学校を卒業し、歌手を目指すように。施設や学校を訪問してパフォーマンスする他、ライブ配信やサブスク配信などで活動してきた。
30歳の節目を迎え「何かやり残したことはないか」と振り返り「手話をやっていなかった」と、本格的に始めることに。サークルなどに積極的に参加し、実践を重ねた。
聴覚障害者にもライブを楽しんでもらいたいと、習得した手話を歌詞に合わせて表現していたが「何を伝えたいか分からない」と言われ、手話を並べるだけでは伝わらないのだと実感した。
強力さんのライブは、音楽に合わせて来場者も一緒に手話を使うことで違った楽しみ方ができるのが魅力。聴覚障害者にも届き始め、手話を知らない人にも興味を持ってもらうために活動の幅を広げた。
歌詞には「大丈夫、前を向こう、自由に」などの応援メッセージを込めたものも多く、来場者から「救われました。私が救われたので、もっと多くの人を救っていけるはず」との声をもらい、「自分の音楽は誰かの力になっている、僕の使命なのかも知れない」と気付いたという。
4年前、結婚を機に妻の出身地である和歌山に拠点を移した。昨年、和歌山市のJR和歌山駅前で行った路上ライブ動画の再生回数が一気に増え、フォロワー数も上昇。動画を見た人から「感動した、夢ができた」などの反響があった。

「この1年は、動画を見てくださった皆さんに会いに行く一年にしたい」と意気込み、全国行脚へ。イベントには交通費だけで出演している。「社会貢献活動を続けるために多くの人に知ってもらいたい」と話し、目標は3年以内に紅白歌合戦に出場することと言い、世界進出も目指している。