多田さん(声楽家)らに栄誉 和歌山市文化表彰

和歌山市の文化向上、発展に大きな功績のある個人・団体に贈られる2025年度市文化表彰の受賞者が決まった。「文化賞」に声楽家・演出家の多田佳世子さん(86)、「文化功労賞」に声優の小西克幸さん(52)、俳人の堀本裕樹さん(51)、「文化奨励賞」に作詞家の木村友威さん(41)、大谷獅子舞保存会(朝間義光代表)の4人と1団体が選ばれた。表彰式は11月3日、和歌山城ホールで行われる。(年齢は表彰式時点、写真は市提供)
多田さんは和歌山市出身。武蔵野音楽大学短期大学部声楽科卒。音楽教員として後進を育成・指導しながら、現在も会長を務める和歌山市民オペラ協会の前身「和歌山声楽研究会」を1964年に立ち上げ、ソリストとして出演する他、プロデューサー、ディレクター、指導者として、市に本格的なオペラを根付かせる活動を60年にわたり続けてきた。
新作オペラでは、道成寺の安珍・清姫の伝説など和歌山ゆかりの人物や物語にスポットを当てた作品を演出し、濱口梧陵を題材とした作品「稲むらの火の物語―梧陵と海舟」は、2022年に「第20回佐川吉男音楽賞」を受賞している。
さらに、音楽療法を活用したボランティア活動や市民向けの音楽教室「唱歌の学校」など、音楽を通じた地域貢献も続け、功績は極めて顕著と評価された。
小西さんは和歌山市出身。勝田声優学院を卒業後、野村道子、野沢那智、内海賢二の各氏が講師を務める養成所に1期生として入所し、翌年から、野村氏の誘いで賢プロダクションに所属している。
「シャーマンキング」の阿弥陀丸役、「ジョジョの奇妙な冒険Part5黄金の風」のディアボロ役、友ヶ島を舞台としたアニメ「サマータイムレンダ」の雁切真砂人役、「鬼滅の刃」の宇髄天元役など、熱血系からクールな役柄まで自在に演じ分ける実力派として知られ、2014年には第9回声優アワード助演男優賞を受賞している。
堀本さんは和歌山市出身。國學院大学在学中の19歳から俳句を始め、出版社勤務、コピーライターを経て、角川春樹主宰の俳句結社「河」に入会。2010年の独立後は、創作活動と並行して、俳句の豊かさや楽しさを伝えるため、「いるか句会」の主宰、角川庭園俳句講座の講師、NHK俳句の選者などを務めてきた他、句会ライブ「HaikuBar」の開催、文筆家や芥川賞作家、ゲーム作家と共に登壇する公開句会「東京マッハ」の開催など、独自の視点で俳句の魅力を発信している。
第2回北斗賞、第36回俳人協会新人賞、第11回日本詩歌句随筆評論大賞など受賞多数。
木村さんは和歌山市出身。幼少期から歌やダンスに親しみ、16歳の時にavex artist academy第1期生に合格した。
2012年、韓国の人気グループKARAの「ロックオン」で作詞家としてデビュー。以来、ミリオンセラーを達成したKing & Princeの「Life goes on」や「彩り」、NiziUの「Step and a step」、SMAPの「無我夢中なLIFE」、Hey!Say!JUMPの「Donkey Gongs」など、国内外の著名アーティストに歌詞を提供している。
作詞活動に加え、化粧品のコピーライトなども行い、広く言葉を扱う分野で活躍している。
大谷獅子舞保存会が主宰する大谷獅子舞は、200年以上の歴史を持つ金毘羅宮社の奉納舞。大谷の奥山で女性や子どもが大蛇にのみ込まれ、山伏から神をいさめるための獅子舞の教えを受け、若者たちが習ったのが起源とされる。
金毘羅宮社が伊久比売神社へ遷座した後、夏の盆踊りの後によく舞われていたが、満州事変以降の戦争激化に伴う自粛令により廃れた。戦後の1948年に再開されたが、77年に再び中断。2011年に保存会が復活させ、金毘羅宮社、伊久比売神社での奉納や楠見地区の祭り、イベントなどで披露し、後継者育成にも取り組んでいる。


