酪農と「ご当地牛乳」の魅力

前号では、熊野牛の素となる品種で食味に優れた「但馬牛」の魅力を取り上げた。淡路島は酪農も盛んな地域。今週は淡路島における酪農の魅力と強みを紹介したい。
春から秋にかけての気温が暖かい時期、観光客に人気であるのが「ソフトクリーム」や「アイスクリーム」など地元でとれた生乳を使ったスイーツ。
淡路島では120年以上前から酪農が始まっている。温暖な気候と良質な水が乳牛の環境に良く、牧草や穀類の入手も容易で、これらを主とした飼料を与えることで、質の高い生乳が生産できるという。特に、乳脂肪分や無脂乳固形分の数値が他県よりも高いことから濃厚な味わいになる。
島内には100を超える酪農家が牧場を構える。生乳を集め製品化する工場と酪農家が近接していることから毎日集乳でき、搾乳から製造までの工程が短いことで、鮮度の高い乳製品が生まれる。加えて、スイーツを提供する店舗までの輸送時間が短いことから新鮮な状態で消費者に提供できる。濃厚で新鮮な味わいは淡路島ならではの強みである。
和歌山県内の酪農にも触れたい。農水省畜産統計調査によると、2023年時点での県内の酪農家は6戸で、乳牛の数は約500頭。県内で集乳する工場が小規模であるため、生乳のほとんどを県外へ移送している。
県内の牧場でとれた生乳を販売する店舗は多くないが、酪農家が自ら小規模の工場を持ち、乳製品にしているところもある。生産量にはかなわないが、淡路島の酪農の強みである、搾乳から消費者へ届けるまでのスピードは引けを取らない。
夏場は乳牛が水を多く飲むことから生乳が薄くなるが、冬季になると濃厚な味わいになってくる。一年で最もおいしいこの季節。ご当地の乳製品を味わってほしい。(次田尚弘/洲本市)

