主体性を力に 市和歌山に貝塚ヤングがエール

兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で熱戦が続く第94回選抜高校野球大会の5日目(23日予定)に登場する市和歌山に、多くの選手を輩出してきた中学生チームがある。大阪府貝塚市の貝塚ヤング。中学生の時期から自主性に任せる「放任主義」の指導法が特徴だが、裏腹に「自己管理」というプロ並みの責任も選手は背負う。その厳しさをたたき込まれた選手が、ことしも大舞台の初陣に挑む。

貝塚ヤングは大阪府南部に位置する貝塚市で活動する1学年あたり約20人の硬式の中学生野球チーム。17年前に創部し、川端末吉さん(68)は監督として16年目を迎える。川端さんの息子の慎吾さん(34)も、市和歌山(当時は市和歌山商)からプロ野球・ヤクルトに進んだ。

育成指導は本人任せ。「理にかなっていれば、本人の好きなようにやらせる」と言いながらも、「土日の練習で平日に積み上げた自主練習の成果を見ている」と厳しさも垣間見える。

そんな「野球脳」を育んだ教え子たちが、新たな野球人生を歩んでいる。市和歌山からプロ入りした小園健太投手(DeNA)と、松川虎生(こう)捕手(ロッテ)バッテリーも出身選手。当時の小園投手を振り返り「マウンドさばき、間の取り方、野球脳が備わっているピッチャー」と評価。松川捕手に関しては、自身のバッティングについて積極的に質問していたと懐かしそうに話す。

今大会、市和歌山のエースとしてセンバツに挑む米田天翼(つばさ)投手(3年)も、小園君から「主体性」を脈々と受け継いでいる。昨年秋からことしの春にかけて、ストレートの威力を増すために、自分と向き合い、体に合ったフォーム改造に取り組んだ。米田君の野球に対するひたむきな姿勢を見守ってきた川端さんは、「米田君のスピードは小園君と変わらない。コントロールも昨年秋から良くなりつつあるので、強打の花巻東打線をきっと抑えてくれる」と期待を込めた。

「米田君なら抑えてくれる」と期待を寄せる川端さん

「米田君なら抑えてくれる」と期待を寄せる川端さん