経済的補償の充実を 事件遺族が訴え

犯罪被害補償を求める会(兵庫県)は27日、和歌山市小松原通の県民文化会館で「犯罪被害補償を求めるinわかやま集会」を開き、被害者が〝泣き寝入り〟せざるを得ない国の犯罪被害補償制度の現状や、国が損害賠償を立て替えて加害者に求償する制度設立への思いを訴えた。

同会は2008年、被害者とその家族らで結成。殺人事件の被害者賠償について、加害者の多くは資産がなく賠償を求めても払えず、あっても払おうとしないことが多い上、国の犯罪被害給付金制度は金額が少なく、さまざまな条件でもらえない人が多い実態を訴えている。

妻を刺殺され、自身も重傷を負った同会の藤本護理事長(93)は冒頭、「1人でも2人でも、被害者の実態を知ってもらい、支援してもらいたい」とあいさつ。

集会には2015年2月に紀の川市で刺殺された小学5年生(当時11歳)の森田都史さんの父・悦雄さん(75)も出席し、事件当日に都史さんが着用していた服を見せながら「残酷過ぎて鬼畜生(おにちくしょう)と思った」などと悲痛な叫びを語った。

また、加害者に損害賠償の支払いを命じる判決が確定しているものの、「まだ1円も払われておらず謝罪もない」といい、「いまだにアルバイトをしながら何とかやっている」と犯罪被害者やその家族に対する経済的な補償の充実を訴えた。

同会の活動に賛同し、協力する大阪市の坂本哲(さとし)弁護士は「この問題にぜひ関心を持っていただき、被害者だけでなく、一般市民が声を上げていかないと法律になっていかない」と支援を呼びかけた。

同会の川崎敏美事務局長は、長野県で今月起きた立てこもり4人死亡事件を挙げ、「人ごとではない。国民が安心して住めるような状況、制度を日本でもつくり出していきたい」と話した。

都史さんが着用していたダウンジャケットを見せる森田さん㊧

都史さんが着用していたダウンジャケットを見せる森田さん㊧