児童文学作家の嘉成さん 作品への思い語る

和歌山市出身の児童文学作家・嘉成晴香(かなりはるか)さん(37)の最新作『涙の音、聞こえたんですが』トーク&サイン会が18日、同市松江のTSUTAYA WAYガーデンパーク和歌山店で開かれた。初となる地元でのトークイベントに嘉成さんは緊張の面持ちで「週に1度は本を買いに来ていたここで皆さんに会えてうれしい」と、集まったファンら約30人の前で学生時代の話や、同書に込めた思いを語った。

嘉成さんは河北中学校、向陽高校を卒業。2013年に25歳で「朝日学生新聞社児童文学賞」を受賞しデビュー。これまで8冊を出版している。

ポプラ社から出版された最新作は、涙の音が聞こえるという不思議な能力を持つ中学生が主人公。ある日聞こえてきたのは、こっそり裏庭で泣いていたいつも笑顔の生徒会長の涙の音だった――。「涙」と「弱さ」に揺らぐ10代を描いたピュアラブストーリーで、子どもの頃、友達をつくるのが苦手でいつも一人ぼっちだったという嘉成さんの経験をもとに描いた作品という。

トークショーで嘉成さんは「小学生の頃は涙を流さないのが一番強いことだと思い、悲しくても必死に抑え、校門を出るまで絶対に泣かなかった。『でも本当は誰かに見つけ出してほしかった』という思いにファンタジーを盛り込んだ」と話し、ラブストーリーについては「中学生で人を好きになる気持ちは大切。かなっても、かなわなくても人生の宝物だと思い書いた。キュンキュンできるにはどうすればいいか、中学、高校時代の日記を参考にした」と笑顔。

児童文学を書き始めたきっかけについて「小学生が自殺したというニュースを見て『消えてしまいたい、いなくなりたい』と思っていた時期があったことを思い出し、本を読んで楽しい気持ち、明日も頑張ってみようかな思ってもらえたらと思い、子どもに読んでもらえる作品を書き始めた」と、これまで執筆した作品を紹介した。「泣くことは弱さではない。それをきっかけに前に進めるから強くなろうと思わなくてもいい。ただ泣く時は一人ではなく家族や友人の前など、あったかいところで泣いてほしい」とメッセージを伝えた。

会場には恩師や同級生も来場し「立派になったなぁ」などと声がかかり、昔話に花を咲かせていた。

著書への思いを語る嘉成さん

著書への思いを語る嘉成さん