乙姫来山絵巻、幻想的に 紀三井寺で龍灯行脚

一日のお参りで千日分の功徳が授けられるといわれる「千日詣」が9日、和歌山市の紀三井寺であった。千日詣の起源となった龍灯伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」では、大勢の参拝客が見守る中、オーディションで選ばれた県立和歌山商業高校1年の岸部杏さんが堂々と乙姫役を務め、幻想的な縁起絵巻が繰り広げられた。
行脚は同寺を開山した為光(いこう)上人が、大般若経を書き写した8月9日、龍宮城の乙姫を名乗る女性が、海の中でも消えない灯籠を献上に訪れたという故事を知ってもらおうと始まり、6回目。ことしは同市の漫画家、マエオカテツヤさんが行脚を先導する露払い役で参加。大衆演劇役者の奏緋七(かなでひなた)さんが龍宮の使者として出演するなど、見どころたっぷりの内容となった。
夜の境内に鈴の音が響く中、乙姫一行はゆっくりと歩を進め、境内に設けられた舞台へ。乙姫が為光上人役の前田泰道貫主に龍灯を手渡し、龍や女官らが音楽に合わせて幻想的に舞った。本堂では、女官らが優美に衣をなびかせる姿に、大勢が見入った。
乙姫役を務め上げた岸部さんは「緊張しましたが、楽しもうという気持ちで、15歳に見えないよう意識して演じました。普段の学校生活では絶対に味わえない体験ができ、忘れられない夏の思い出になりました」と笑顔。この他、拾うと福が授かるといわれる福棒投げもあった。