外国人の教育支援考える WULPがシンポ

国際化に伴う社会の変化や課題を考える「多文化共生のまちづくりシンポジウム」が8月28日、和歌山市の県民文化会館で開かれ、外国人児童生徒への教育支援や地域の在り方などについて、約60人が講演などを通して学んだ。

WULP(ワルプ)まちづくり会議(樫畑直尚会長)が主催。同会議は、和歌山青年会議所が主体となり、和歌山のまちづくりについて米国諸都市との地域間交流などを通して学び、県や市への提言などの活動に取り組んでいる。

シンポジウム第1部では、静岡文化芸術大学の池上重弘教授(53)が「外国につながる子どもへの教育支援の充実について」と題して講演した。

国内の在留外国人数について、平成2年からの約20年間で倍増し、約200万人に達していることを紹介。日本語の習得や子どもの学校への適応、進路の保障などが課題となっており、ブラジル人第二世代を例に挙げ、大学に進学し、語学力や異文化適応能力を生かして活躍するグローバル人材が現れている一方、日本語も母国語も十分に話せず、アルバイトで生活をつなぐような底辺層も増え、格差が拡大している問題を指摘した。

こうした課題に対する取り組みの事例として、静岡県磐田市の東新町団地を紹介。同26年、団地の人口の約60%を外国人が占めたことから「多文化交流センター」が設立され、外国人児童生徒が仲間と共に勉強したり遊んだりでき、地域住民らとの交流も図れる環境を整える活動が推進されている。

池上教授は「言語や家庭環境などの問題で困っている児童生徒を助けるだけでなく、支援のボランティアを引き受ける地域住民の楽しみや生きがいになることが、取り組みの成功につながる」と強調した。

第2部のパネルディスカッションでは、県国際交流センター外国人生活相談員の鬼塚ジョアンさんが、日本語を習得していない児童生徒の授業サポートなどに取り組んでいる活動を紹介し、「自分にできる精いっぱいのことはしているが、限界もある」と指摘。池上教授は「ボランティアを養成する研修や教育相談の窓口となる機関が必要」と話した。

参加した和歌山大学教育学部4回生の辻立貴さん(23)は「和歌山市のように外国人児童生徒が散在している地域では、どのような支援策が適しているのか模索したい」と話していた。

パネルディスカッションで発言する出席者ら

パネルディスカッションで発言する出席者ら