「南葵音楽文庫」県に寄託 ベートーベン自筆譜も
紀州徳川家の第16代当主・徳川頼貞(1892~1954)が東京・麻布に整備した国内初の音楽専用ホール「南葵(なんき)楽堂」の併設図書館に所蔵され、昭和52年から読売日本交響楽団が所有していた貴重な音楽書や楽譜のコレクション「南葵音楽文庫」約2万点が県に寄託されることが決まり、2日、県庁で調印式が行われた。
膨大な資料の多くは西洋音楽に対する造詣の深さで知られた徳川頼貞が収集。ベートーベンによるロシア民謡の自筆楽譜や、16世紀初めに作られた楽譜付き印刷書籍など、世界的に評価が高く、貴重な資料がそろっている。
資料は南葵楽堂の地下に開設されていた音楽図書館で大正9年から公開されていたが、関東大震災による建物の損傷などにより同館が活動休止に追い込まれると、一般の人の目にふれる機会は激減した。
昭和52年からは読売日本交響楽団が所有しており、それを知った県関係者が同楽団に働き掛け、昨年2月から寄託に向けて本格的に協議を行ってきたという。
調印式には、同楽団から、小林敬和理事長(62)、飯田政之常任理事(58)が出席し、仁坂吉伸知事との間で寄託契約が交わされた。
仁坂知事は「県内には紀州徳川家の遺物が少なく、寂しいと思っていた。音楽文庫の整備を通じ、世界に向けて素晴らしい文化を発信したい」と喜びを語り、小林理事長は「南葵音楽文庫が幅広く活用されることが決まりうれしい。我々としても記念コンサートの開催などを通じて和歌山の音楽文化発展に寄与していきたい」と話した。
県文化学術課によると、資料は来年3月ごろをめどに県内に移され、特に貴重な98点を県立博物館、それ以外の資料は県立図書館で所蔵する。一般向けの公開は来年秋以降を予定している。