映画化2小説を語る 百田尚樹さん講演
公益社団法人県トラック協会(龍田潤三会長)は18日、第35回物流セミナーを和歌山市の県民文化会館で開き、小説家・放送作家の百田尚樹さん(60)が約300人の来場者の前で講演し、ヒット小説に込めた思いなどを話した。
百田さんは大阪府出身。放送作家として、関西を中心に人気を集める長寿テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」の構成などを長年手掛け、平成18年に発表したデビュー小説『永遠の0』が100万部を超えるベストセラーとなり、映画化もされ、一躍人気作家になった。
講演で百田さんは、『永遠の0』の執筆のいきさつを紹介。父親が百田さんにはしていた戦争の話を、孫(百田さんの子ども)には話さなかったことから、「当時の話を残したい」と奮い立ったことを振り返った。
また、出光興産創業者の出光佐三をモデルにした小説で、本屋大賞を受賞し、昨年12月に映画も公開された『海賊とよばれた男』(24年発刊)についても語った。同作は、石油を国有化しようとしたイランと、石油利権を支配していた英国が対立する中、イランに同情した出光が、タンカー「日章丸」を極秘裏にイランに向かわせ、無事に石油を積んで帰還した物語。
百田さんは「当時、連日新聞の1面で報道され、敗戦直後の人々に勇気を与えたが、私を含めて忘れ去られようとしていた日章丸事件の話を、東日本大震災で自信を失っていた現代の人々に伝え、勇気を与えたかった」と作品に込めた思いを話した。
両小説の共通点について、百田さんは「二つの物語の中心には大正時代に生まれた人たちの活躍があった。戦勝国もできなかった新幹線の開通など、大正時代の人はやり遂げた」と話し、「大正生まれの男性1340万人のうち200万人は戦争で死んだ。大正世代の人は、人のために生きた世代であり、偉大な世代だった」と敬意を表した。