家康使用の関ヶ原の采配 美濃市の復元品披露

 天下分け目の関ケ原の戦いで徳川家康が使ったとされる采配(さいはい)が昨年、岐阜県美濃市でレプリカとして復元された。原資料である本物の采配は紀州東照宮が所蔵し、和歌山県立博物館が保管するもの。完成したレプリカが和歌山市吹上の同館で披露され、本物と共に二つの采配が初めてそろって並べられた。

 戦場で大将が軍勢を指揮する際に振って使用した采配は、細長く切った厚紙を束ねた房に、持ち手の柄を取り付けた指揮具。家康が関ケ原で振るった采配の房には、美濃市特産の美濃和紙が使用されていたという。同市は和紙のシンボルとして采配のレプリカを作り、美濃和紙の伝統技術や歴史を広く知ってもらおうと昨年11月に復元。実際の製法や材質に基づいて、房や柄、金具や組みひもなど寸法から色彩まで当時のままに再現した。

 県立博物館には、紀州東照宮の西川秀大禰宜をはじめ、美濃和紙の里会館の清山健館長、復元に携わった文化財修復士の増井義彦さんら10人が立ち会い、並んだ二つの采配を前に製作過程の説明、細部の形状の見比べ、レプリカとしての許可の確認などが行われた。

 県立博物館の前田正明主任学芸員(55)は「原資料は品質管理のため長期間の展示はできないので、このサンプルによって、より多くの人が采配を目にする機会となれば」と期待を寄せ、西川禰宜(44)は「家康公がご使用になった采配が無形文化財の美濃和紙の伝統技術で再現されたのは意義深く、これを機に家康公や受け継がれる伝統を皆さんに知っていただきたい」と話していた。

 レプリカは、美濃市蕨生の美濃和紙の里会館で常設展示されている。

本物(手前)と復元品の二つの采配が初めて並べられた

本物(手前)と復元品の二つの采配が初めて並べられた